■ポイント□
〇海底堆積物の分析により、過去150万年間の大気中二酸化炭素濃度の変動を解明
〇従来のアイスコア分析にもとづく過去80万年間の変動記録を約2倍に延長
〇二酸化炭素の気候変動での役割の解明に役立つ成果
北海道大学大学院地球環境科学研究院の山本正伸教授らの研究グループは、ベンガル湾堆積物に含まれる植物起源脂肪酸の炭素同位体比が過去の大気中二酸化炭素変動を表していることに気がつき、新手法として提案するとともに、過去150万年間の大気中二酸化炭素濃度の変動を明らかにした。
大気中二酸化炭素は地球の気候を決定する重要因子。将来の温暖化を予測するうえで、二酸化炭素が過去の気候変動にどのように影響したのか、詳細に解明することが必要となる。これまで過去の二酸化炭素濃度は、南極の氷を掘削して得られたアイスコアに含まれるガスを分析することで明らかにされてきた。
研究グループは、ベンガル湾堆積物に含まれる植物起源脂肪酸の炭素同位体比が、過去の大気中二酸化炭素変動を表していることを、アイスコアの二酸化炭素濃度を比較によって示した。
さらにその関係を利用し、80万年以前の大気中二酸化炭素濃度変動を、初めて高精度・高時間解像度で明らかにした。
研究の結果、80万年前以前でも二酸化炭素濃度が陸上氷床体積にほぼ同調して変動していたことが明らかになった。しかし、予想外に100万年前よりも前の温暖だった時代でCO2濃度は決して高くはなかったこともわかった。また、100万年前よりも、100万年前よりも前の時代では、二酸化炭素が陸上氷床よりも早く変動していたのに対し、80万年前より後の時代では陸上氷床が二酸化炭素よりも早く変動していたことも判明した。
この研究成果は、4月1日㈮公開のNature Geoscience誌にオンライン掲載された。