□ポイント■
〇西日本にはアズマモグラの生息飛び地がいくつか存在
〇隠岐諸島の島後で新たにアズマモグラの生息を確認
〇モグラの分散様式や人間との関係の解明に期待
北海道大学の鈴木 仁名誉教授らの研究グループと、元大阪市立大学の原田正史氏、島根自然保護協会の野津 大氏は、島根県隠岐の島町で2匹のアズマモグラの捕獲に成功した。
アズマモグラは地下性のモグラ科哺乳類で、日本列島にのみ生息する固有種。青森県を北限に、主に東日本に広く生息しているが、かつては日本全国に生息していたとされている。
現在、アズマモグラが西日本に生息していない原因は、今から100万年以上前、日本列島が朝鮮半島と陸続きであった時代に大陸から移入してきた近縁種であるコウベモグラが西日本に生息地を広げ、アズマモグラを東方に追いやったからではないかと推測されている。
現在に至るまで両種は競合関係にあり、その生息域の境界は変化し続けている。通常アズマモグラに比べて体の大きなコウベモグラは優位だが、土壌の質や地形によってはコウベモグラの侵攻を免れた地域もあり、中国地方や四国、紀伊半島などがアズマモグラの生息する飛び地として西日本に残っている。
鈴木名誉教授らが2021年11月に島根県隠岐諸島で行った小型哺乳類の採集調査で、体の小さい2匹のモグラが捕獲された。詳細な観察の結果、2匹はこれまで隠岐諸島に生息が確認されていなかったアズマモグラであると判明。この報告はモグラがどのように日本に広まって現在の生息地に収まったかを知るうえで重要な知見となる。また、アズマモグラの生息する未発見の飛び地がまだ存在する可能性も示唆している。
この研究成果は、1月31日公開の「哺乳類科学」誌に掲載された。