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○駆除奨励制度によるヒグマ個体群の衰退と制度廃止後の回復過程が判明、○学生によるモニタリング調査が野生動物の保護管理に貢献できることを示唆―。北海道大学大学院農学研究院の中村太士教授、国立環境研究所生物多様性領域の久保雄広主任研究員らの研究グループは、北大のヒグマの生態を調査する学生サークル「北大ヒグマ研究グループ」（北大クマ研）により蓄積されてきた北海道北部地域のヒグマの４０年分のモニタリングデータを時系列解析し、春グマ駆除制度による個体群の衰退と制度廃止後の回復過程を明らかにした。この研究成果は、学生主体の長期モニタリングによって政策転換が大型哺乳類の個体群におよぼす影響を明らかにした国際的にも極めて稀なものといえる。
クマやトラなどの大型食肉目に属する哺乳類の多くの種は、狩猟や生息地減少といった人間活動の影響を受けて個体数が減少している。長期間の個体群モニタリングは、寿命が長い大型食肉目に対する人間活動の影響を明らかにするために重要。ここ数年、市民が主体となった大型食肉目の個体群モニタリングの有効性が期待され始めているが、実証した研究はなかった。
北大クマ研は北大天塩研究林で、１９７５年からヒグマ個体群の動向を明らかにするために、ヒグマの痕跡（糞や足跡）を調べてきた。北海道では１９６９年から１９９０年にかけてヒグマの積極的な駆除を目指す「春グマ駆除制度」が施行された。今回の研究では、１９７５年から２０１５年にかけて北大クマ研が記録したデータを解析し、春グマ駆除制度がヒグマ個体群の動態に与える影響を調べた。
その結果、ヒグマの個体数の指標である痕跡発見率が春グマ駆除期間中（１９７５年～１９９０年）で減少した一方で、春グマ駆除が廃止された後（１９９１年～２０１５年）回復したことを明らかにした。
これまで北海道では、ヒグマの分布や個体数を把握する際にハンター等からの情報・試料提供が用いられてきたが、こうしたモニタリングを担う人たちの高齢化が進み、人口も減少している。
研究では、こうした状況下で大型食肉目の保護管理を円滑に進めていく上で、学生も市民科学者として今後重要な役割を果たしていく可能性があることを示した。
論文執筆者のうち中村太士教授以外は全員が北大クマ研ＯＢ。この研究成果は7月13日公開のＣｏｎｓｅｒｖａｔｉｏｎ Ｓｃｉｅｎｃｅ ａｎｄ Ｐｒａｃｔｉｃｅ誌に掲載された。
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