2021年8月5日 【京大等】量子コンピューターのワイルドカードとなる粒子を解明

京都大学と東京大学、東京工業大学、横浜国立大学の教授、大学院生らの研究グループは、ドイツ・ケルン大学との共同研究で、「量子コンピュータのワイルドカードとなる粒子を解明した」と発表した。2次元的な平面構造をもつある種の磁性体で現れる「非可換エニオン」と呼ばれる粒子の性質を明らかにしたという。

この研究成果を発表したのは、京大大学院理学研究科の横井太一修士課程学生、馬斯嘯同修士課程学生(現:富士通㈱)、笠原裕一同准教授、笠原成同特任准教授(現:岡山大異分野基礎科学研究所教授)、松田祐司同教授、東大大学院新領域創成科学研究科の芝内孝禎教授、東工大理学院物理学系の田中秀数 教授、栗田伸之同助教、横国大大学院工学研究院の那須譲治准教授、東大大学院工学系研究科の求幸年教授の研究グループ。

3次元世界では、二つの同種の粒子を2回入れ替えると必ず元の状態に戻ってしまう。これに対し非可換エニオン粒子は、2回入れ替えても元には戻らない(非可換)という奇妙な性質を持ち、トポロジカル量子コンピューターと呼ばれる環境ノイズに強い量子コンピューターの動作を可能にする基本粒子。

今回注目した物質はα-RuCl3(塩化ルテニウム)と呼ばれる蜂の巣状の平面構造をもつ磁性絶縁体。非可換エニオン粒子が存在することを示唆する「半整数熱量子ホール効果」が観測されていた。

非可換エニオンは、自身が反粒子と同一であるマヨラナ粒子で構成され、熱ホール効果の符号は、マヨラナ粒子の動きが右ひねりと左ひねりのメビウスの輪のどちらに対応するか、というようなトポロジーにより決まる。非可換エニオンの存在を決定的にするためにはそのトポロジーの詳細を明らかにする必要がある。

研究グループは、半整数熱量子ホール効果の符号が磁場の方向により逆転する現象を発見し、半整数熱量子ホール効果が現れる磁場方向を特定することで、非可換エニオン粒子のトポロジーを決定することに成功した。

この研究により明らかとなった非可換エニオン粒子のトポロジーは理論模型と良い一致を示し、非可換エニオン粒子が物質中に安定して存在することが明らかになった。このことは、トポロジカル量子コンピューターを実現するうえでα‐RuCl3が有力な候補物質であることを示しています。

この研究成果は、7月29日(現地時間)に米国の科学雑誌「サイエンス(Science)」にオンライン掲載された。

 


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