京都大学の石田 厚生態学研究センター教授、河合清定ポスドク研究員(研究当時)、中村友美 理学研究科修士課程学生(同)と森林総合研究所の才木真太朗研究員、矢崎健一同主任研究員らの研究グループは、世界自然遺産である小笠原諸島で、〝種子の大量生産後、引き続いて起きた異常気象によって、樹木がどのように衰退・枯死していったのか〟といった生理過程を明らかにした。
ここ数年、地球温暖化等による気候変動のため熱波や山火事、干ばつといったさまざまな異常気象が頻発している。こういった異常気象により、樹木の枯死や森林の衰退が世界各地で報告されており、今後、地球温暖化の進行により、こういった異常気象はさらに頻発していくことが予測されている。
一方、樹木は子孫を残すために種子繁殖する。その際多くの樹木種で、何年かに一度、多くの個体が一斉に開花し大量の種子を生産するという現象がみられ、これをマスティングと呼ぶ。マスティングが起きる年(なり年)には、あまりに多くの種子を生産するため、樹木が弱ることもしばしば報告されている。
今後の温暖化により、マスティングと異常気象が連続したり、同時に起きてしまうといったタイミングも増える可能性を排除できない。こういったイベントが連続して起きた場合、樹木はどのような影響を受けるのか未だ定かではない。
石田教授らの研究では、種子繁殖によって樹木体内に貯蔵されていたでんぷん(糖)をより多く使ってしまった個体ほど、その後に起きた異常気象(大型台風や夏の干ばつ)後の回復が弱く、貯蔵でんぷんも貯められず、結局樹木は糖欠乏の負のスパイラルに陥って衰退し、時には枯死にまで至ってしまうことがあることが明らかにした。
この研究成果は、9月15日に、国際学術誌「Global Change Biology」のオンライン版に掲載された。