2023年3月2日 【京大】自由診療で行われる再生医療の審査に関する課題を調査 今後の制度改正に期待

京都大学や国立がん研究センターなどの研究チームは、再生医療を実施する際に遵守する「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、当該再生医療等提供計画の審査を行う特定認定再生医療等委員会の設置・運用方法等の課題を調査し、関連法規等と比較しながら包括的に分析・検証を行った。

その結果、独立・公正な審査を期待できない委員会が存在すること、また当該委員会による審査に基づき承認された治療計画の中に安全性の科学的根拠や医師の専門性に疑義が認められるものが一定数あること、さらに誇大広告等不適切な広告によって患者の理解や治療選択が誤導される恐れがあることが、具体的かつ定量的に明らかになった。

調査では、委員会の「審査の質」を「審査を受けて、実施が可能となった計画の内容」で測ることにした。具体的には、第二種再生医療等の治療計画を対象に、①安全性の科学的根拠の有無と②医師の専門性の2点に着目して調査・分析をした。

  1. 治療計画の安全性の科学的根拠の有無を調査:第二種再生医療等の治療計画351件と添付された文献2495件を対象に、当該治療計画が治療としての安全な実施を裏付けるだけの科学的根拠に基づいているかを調査した。主な調査結果として、①添付文献が確認できなかった計画:20件(5.7%)、②添付文献の内容が判別不能だった計画:15件(4.3%)、③Predatory Journal(いわゆるハゲタカ・ジャーナル)掲載論文を引用した計画:8件(2.3%)、④安全性を確認できる臨床研究論文の引用なし(細胞と対象疾患についての不一致、結論が安全性証明せず等)の計画:45件(12.8%)があることを確認しました。すなわち、合計88件(25.1%)の計画に安全性の科学的根拠に疑義が生じる結果となった。
  2. 治療計画に関与する医師の専門性を調査:第二種再生医療等の治療計画391件を対象に、当該計画が治療対象とする疾患等とその治療を実施する医師の専門性とが適合するかを調査した。主な調査結果として、両者の間にミスマッチがあることが「強く推定される計画55件(14.1%)」、「推定される圭角62件(15.9%)」があることを確認した。すなわち、合計117計画(30.0%)に対象疾患等と医師の専門性にミスマッチがあることを判明。つまり、二つの観点から一定数の第二種再生医療等の治療計画の適切性に疑義が生じた。

 

再生医療法は、わが国の再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするために、2013年に制定された。再生医療法に基づき、再生医療を「治療(現状の圧倒的多数は自由診療)」または「臨床研究」として実施する場合には、医療機関は厚生労働大臣の認定を受けた委員会に再生医療の提供計画を提出して審査を受ける。

委員会は、再生医療等技術や法律の専門家等の有識者からなる合議性の委員会で、現在162の委員会が認定されている。また、審査を受けて現在実施できる状況にある再生医療の提供計画は、治療(自由診療)が5013件、臨床研究が104件となっている。

このような国が治療の実施計画に対して法規制(第三者審査の制度)を設ける仕組みは、他の医療分野にはほとんど前例がなく、必要性だけでなく実効性に懸念が持たれていた。また、再生医療法の施行後は、法制度の要である委員会の審査の質が、厚生科学審議会再生医療等評価部会で問題視され、課題や問題点に対応するため、厚労省は委託事業「認定再生医療等委員会の審査の質向上事業」を令和元(2019)年度に始めた。

 


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