2022年3月8日 【京大】大手石油会社による「クリーンエネルギーへの移行」という誓約は実際のビジネスモデルや投資行動と矛盾

大手石油会社であるBP、シェブロン、エクソンモービル、シェルが主張するクリーンエネルギーへの移行は、これから世界的企業の行動や投資によって裏付けられていないグリーンウォッシュ(上辺だけの欺瞞的な環境訴求)であることが、京都大学大学院地球環境学堂のグレゴリー・トレンチャー准教授らの共同研究で明らかとなった。

この研究は、トレンチャー教授をはじめ、東北大大学院環境科学研究科の李玫(リ・メイ)博士課程後期学生、東北大東北アジア研究センター・同大学院環境科学研究科の明日香壽川(ジュセン)教授の3氏が、これら各社が公開している12年間の年次報告書などのデータを収集・分析したもの。2月16日付の国際学術誌「PLOS ONE」にオープンアクセスで掲載された。

この研究は、石油メジャーと呼ばれる石油会社の大手4社のクリーンエネルギーへの移行を示すさまざまな戦略や行動に関して、これまでで最も包括的な分析を行ったもの。これら石油会社のエネルギー製品は、1965年以降の世界の二酸化炭素排出量の10%以上を占めている。

2009年から2020年にかけて収集された公表データなどを用いて脱炭素化とクリーンエネルギーへ移行するための活動の程度を比較分析した。比較分析で用いたのは、1)各社の年次報告書での気候変動やクリーンエネルギーに関するキーワードの使用(登場)頻度に基づく言説分析、2)各社事業戦略に基づく誓約と実際の行動の分析、3)各社の化石燃料の生産、支出、収益とクリーンエネルギーへの投資額の分析―の三つ。

各社の年次報告書における気候変動やクリーンエネルギーに関するキーワードの使用(登場)頻度に基づく言説分析の結果としては、過去12年間で、特にBPとシェルが、年次報告書で「気候」「低炭素」「移行」に関連するキーワード大きく増やした。

一方で、実際の事業戦略分析で、言説と一致する行動を示す証拠を探してみると、クリーンエネルギーに関連する活動のほとんどは、具体的な行動ではなく、単なる誓約の形になっていることがわかった。この事業戦略分析によると、シェブロンとエクソンモービルはヨーロッパの競合他社に大きく差をつけられ、実際には脱炭素に逆行する行動、すなわち炭素排出を増やす行動(例:化石燃料生産を拡大する意図を表明)が多かった。

しかし、欧州の大手石油会社の行動でさえも、誓約と矛盾することがある。例えば、BPとシェルは化石燃料採掘事業への投資を削減することを誓約しているが、実際には両者ともここ数年、新規探査のための土地面積を増やしている。

財務データの分析結果でも、各社がコアビジネスモデルを化石燃料からクリーンエネルギーへ包括的に移行させていないことが明らかになった。すなわち、年ごとの変動やパンデミックの影響を除けば、(ⅰ)化石燃料の生産量の減少、(ⅱ)ビジネスモデルの上流収益への依存度、(ⅲ)化石燃料に関する明確な減少傾向は見いだせなかった。

すなわち、石油会社の大手4社のビジネスモデルは、依然として化石燃料に依存している。例えば、シェルとエクソンモービルは、2020年の年次報告書で、気候変動緩和のための化石燃料生産削減の必要性を明確に否定している。

さらに、クリーンエネルギーへの投資を分析した結果、化石燃料からのシフトを示すような規模で自然エネルギー市場に参入した石油大手があることを示す証拠もなかった。

 


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.