京都大学と㈱エクサウィザーズ(東京都港区)は共同で、公益財団法人日本医療機能評価機構(PMDA)が公表している「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の事例(薬局ヒヤリ・ハット事例)に対して、PMDAが実施した評価結果をもとに、医薬品の安全性に関するテキスト報告データを評価するAIを開発した。今回の検証で、対策が必要となる事例を「見落としを最小化する」指標である〝Recall96%〟で抽出することができた。今後数年での実用を目指し、さらなる精度向上を対応中。
薬局のヒヤリ・ハット事例、年間14.5万件
薬局で発生した調剤や疑義照会等に関する薬局ヒヤリ・ハット事例は令和元年度では約14.5万件報告されており、このうち、PMDAでは、「規格・剤形間違い」「薬剤取違え」「その他」「疑義照会」に関する事例から抽出。この抽出事例に対して、医薬品の物的要因に対する安全管理対策の要否について検討を行っている。
さらに、評価結果を踏まえ、医薬品の製造販売業者等による対策の必要性の有無に応じて、医薬品の物的要因に対する安全管理対策を実施している。
こうした現状を踏まえて、京大とエクサウィザーズは共同で、PMDAが実施した過去の評価結果を学習させた安全対策要否の評価AIを開発。事例の内容や製剤の特性等に応じてPMDAが設定した安全対策要否の5段階評価をAIに行わせたところ、対策が必要とPMDAが評価した事例に対してAIの分類が、「見落としを最小化する」指標である〝Recall96%〟であることを検証した。
この検証の中では、添付文書等の薬剤データベースでの薬効情報や規制区分等の情報を反映することで、事例の内容に含まれる重篤な健康被害を伴い得る薬剤の情報を抽出・評価する手法も活用している。