■ポイント□
〇生物標本の維持管理には多大なコストが必要で、かつ標本の劣化は免れない
〇世界に先駆けてデジタル化された生物標本の3Dモデルを1400点以上オンライン公開
〇メタバースやバーチャルリアリティへの応用・利用が期待される
生物標本は生物を研究する上で重要な役割を担っており、博物館等で保管されている。しかし管理は煩雑で、加えて標本の劣化や退色は免れられない。また、多くの重要標本は厳重に管理されますが、それが故にアクセスが困難で、結局あまり利用されないといったジレンマも抱えている。
こうした現状を背景に、九州大学の研究では、フォトグラメトリ(被写体をさまざまな角度から複数撮影することで3Dモデルを構築する手法)により、生鮮時のカラフルな状態での生物標本を3Dモデル化し、オンラインで公開した。
九州大学持続可能な社会のための決断科学センターの鹿野雄一特任准教授が、世界に先駆けて、独自かつシンプルなフォトグラメトリの手法を開発。「バイオフォトグラメトリ」と銘打って、水生生物を中心に1400点700種以上の生物標本の3Dモデルをオンライン公開した。
公開された3DモデルのほとんどはCC BY 4.0ライセンスの下、誰でも自由にダウンロード・利用できる。
今回公開されたような生物3Dモデルは生物学だけでなく、さまざまな分野への応用が期待されている。例えば生物図鑑は現在2次元画像だが、将来的には、3Dモデルによるデジタル図鑑へと変容していくと考えられる。また、生物多様性・環境教育などに関するメタバースやバーチャルリアリティにもこれら3Dモデルが利用できるとみられている。