国立歴史民俗博物館を中心に開発を進めている歴史資料の市民参加型翻刻プラットフォーム『みんなで翻刻』。これまでに市民5000人の参加を得て、1400万文字以上の「くずし字」で書かれた歴史資料を解読している。
こうした実績を踏まえて、『みんなで翻刻』では新たに福士県文書館(デジタルアーカイブ福井)と連携して、松平文庫の資料の翻訳に取り組む。このプロジェクトにより多数の未翻刻を着実に進める方針。また、地域の歴史資料の解読を通して、歴史研究の基礎資料拡充と地域の歴史に対する市民の親しみと知識の深化につなげる。
今回翻刻する松平文庫は、江戸時代に福井藩で作成・使用された公文書類(藩政資料)や越前松平家・福井藩校に伝来した書籍(国書・漢籍)など、1万点を超える資料から構成されるコレクション。1950年の福井県立図書館の開館以来、松平家から委託を受けた同図書館が利用と保存に努めてきた。2019年には委託先が福井県文書館に変更された。
今回のプロジェクトは、福井県文書館との連携のもと、多数の未翻刻資料が含まれる松平文庫を『みんなで翻刻』」上に公開。市民参加とAIによるサポートを通じて、翻刻資料を大幅に増やすことを目的としている。歴史研究の基礎資料拡充に加えて、地域の歴史に対する市民の親しみと知識の深化が期待される。
昨年の「図書館オブザイヤー」獲得
『みんなで翻刻』は歴博をはじめ、日本学術振興会科研費、東大地震研究所、京大防災研究所の助成を受けている。2017年1月に大量に存在する歴史資料を解読し、過去の地震の理解に役立てること目的に創設された。2019年7月には大幅リニューアルを実施。デジタルアーカイブの国際規格に対応し、国内外の多種多様な機関が所属する資料を翻刻している。
AIによる「くずし字」の自動認識機能を搭載し、「くずし字」に慣れない初心者でもAIの支援を受けながら翻刻作業に参加でき、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2020大賞」も受賞している。