2021年3月12日 「虫嫌い」は都市化と知識不足が要因  東大助教らが1万人調査で明らかに

 

都市部を中心に、現代人の多くが「虫嫌い」である。微小な昆虫でさえ、服についただけで、パニックとなる。ほとんどの虫が自分に対して危害を与えるわけではないのに、我々は何故虫を必要以上に怖がるのか?。

東京大学准教授らは、①虫を見る場所が室内に移ったこと、②虫の種類を区別できなくなったこと―が、虫嫌いの強さと嫌う種類を増やす要因であることを、1万人以上を対象に行った調査で明らかにした。この調査・分析を行ったのは、東大大学院農学生命科学研究科の深野祐也助教と曽我昌史准教授。現代社会に広くみられる虫嫌いの理由を、進化論から人間の心理的構造を探求するアプローチである進化心理学的観点から提案・検証した。

虫嫌いは、国内だけでなく、世界的にみられる現象。世界的な虫嫌いは、昆虫の生物多様性保全が進まない一因と考えられており、また、日常生活を困難にするなど、大きな課題となっている。

一方で、なぜ虫嫌いが世界的に一般的なのかはわかっていない。大部分の虫が人間にとって害がないことを考えると、これは不思議な現象といえる。

深野助教らは、①虫嫌いの多くが〝嫌悪〟という感情である、②都市部の住民ほど虫への負の感情が大きい―という二つの知見に着目。日本全国1万3000人を対象としたオンライン実験とアンケート調査を実施し、回答者の昆虫に対する知識と嫌悪感との関連性を定量化した。

同じ虫の画像であっても、室内を背景にした画像を提示された者の方が、屋外を背景にした画像よりも強い嫌悪感を持つことがわかった。これは、都市化によって、野外よりも室内で虫を見る機会が増え、その結果、虫に対する嫌悪感が高まる分析を指示する調査結果となった。

また、都市の住民ほど自然経験の頻度が低く、虫の種目を識別できなかった点にも注目。昆虫の識別能力の高い人は、ゴキブリなど嫌悪を感じる虫と、テントウムシなど感じない虫がはっきり分かれていたのに対し、識別能力の低い人は、テントウムシにも高い嫌悪感を持つことが明らかとなった。

こうした調査結果を踏まえて深野助教らは、「野外もしくは野外を感じさせない条件で虫を見る」「虫の知識を増やし、種類を区別できるようになること」で、虫嫌いを緩和できる可能性があると分析。今後、これらの可能性を実験的に検証する必要があるとした。


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