情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII=エヌアイアイ、喜連川 優所長、東京都千代田区)が構築・運用する学術情報ネットワーク(Science Information NETwork: SINET=サイネット)の加入機関数が1000に到達した。
SINETはこの15年間で300を超える大学や研究機関等を新たに迎え、先端科学や医療をはじめとする様々な学術研究活動や大学等のオンライン教育等に幅広く利用されている。今年4月からは世界一の高密度超高速400Gbpsネットワーク「SINET6」へとアップグレードし、研究者や研究チームはこれまで以上にSINETの多様なサービスを高性能で利用でき、今後もますます利用が伸びるものと期待される。
全国の大学の76%をカバー
全国を世界最先端の400Gbps超高速回線で網羅する学術情報ネットワーク「SINET6」は、研究データを管理、蓄積、流通するためのデータ基盤(NII RDC)と融合した学術研究プラットフォームとして、日本の学術研究活動を支えている。
内訳ごとのカバー率では、国立大学及び大学共同利用機関は100%、公立大学は92%、高等専門学校は98%、国公私立大学を合わせると、約76%の大学が加入している。また、国立研究開発法人をはじめとする研究を目的とする組織等の加入も大きく増加している。
SINETは、2007年度からL2VPNを導入するなどの大幅なサービスの増強、2011年度から全都道府県へのSINET DCの設置、2016年度から全都道府県100Gbps化と新サービスの拡大、2022年度から全国400Gbps化とSINET DCの増設、5Gモバイル機能の提供など、常にカバー範囲の拡大と最先端の技術を用いた高度化を図ってきた。
現在では、世界一の高密度超高速400Gbpsネットワーク基盤となり、さらに、他の研究ネットワークや商用ネットワークと比較しても群を抜いた多様なネットワークサービスを提供している。
また、高信頼性も強化し、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震、2020年の梅雨前線豪雨などでも、障害箇所を即時に迂回しサービスを継続してきた。このような施策が評価され、SINETの加入機関数は15年間連続で増加してきた。加入機関はSINETへの接続で超高速性と多様なサービスを活用できるため、それが様々な研究分野等の需要に対応している。加入機関数の増加はそのメリットをより広げ研究環境の向上へとつながるため、今後も加入機関が増えるようにSINETではサービス増強等を続けていく。
一緒に考え皆で創る「共考共創」
NIIでは、SINETへの様々な要望や利用者から寄せられた知見と、長年培ってきたネットワーク基盤構築運用の経験をあわせ、その時代の最先端技術を用いた多様なサービスを提供してきた。また、現在33社、43拠点が接続中の商用クラウド事業者とも連携し、セキュアで高性能なクラウドサービスのSINET直結も支援していく。
SINETでは国際回線と国際DCの増強も図っており、国際共同研究のために必要なサービス(国際的なL2VPNなど)は海外の研究ネットワークと連携して提供していく。これからも「共考共創」の方針のもと、SINETのアップグレードを続ける。
Society5.0を支える 学術研究プラットフォームへ
現在、ネットワークとITの進歩がAIやIoTの急速な発展を促しており、実世界のあらゆる活動から取得したデータをサイバー空間で解析し、社会生活の効率化や変革に役立てるデータ駆動型社会「Society5.0」を迎えつつある。
NIIでは、今年4月より、全国を400Gbpsの超高速回線で網羅する学術情報ネットワーク「SINET6」と研究データを管理、蓄積、流通するための革新的な研究データ基盤「NII Research Data Cloud(NII RDC)」を融合した学術研究プラットフォームを開始した。
学術研究プラットフォームは、データ駆動型社会(Society5.0)に対応した新たな機能群を加えて、研究ライフサイクルを駆動する推進力となる。人文社会科学も含めて全ての研究分野において分野横断的な研究や国際共同研究を加速する環境を提供するため、今後も様々な分野の教育研究機関の加入を促し、さまざまな場面において研究活動を支援することができる総合的な基盤として整備していく。