日本公庫・農林水産事業はこのほど、今年1月に実施した「平成27年下半期食品産業動向調査」の特別設問に関する調査結果を公表した。特別設問では、食品製造業者に対し、国際的な食品衛生管理の基準となっているHACCPの取組状況が聞かれたが、7割超の企業が既に導入済みであるか、もしくは今後導入予定と回答しており、導入に意欲的であることが分かった。導入(取得)済み、もしくは今後導入(取得)予定のHACCP関連の認証の種類については、FSSC22000、ISO22000などの国際的なHACCP認証によるものが26.6%だった。国際的な取引では、こうした認証の取得を求められることが増えてきており、輸出拡大を目指す日本の食品産業にとって、国際的なHACCP認証の導入を増やしていくことが今後の課題となっている。
各製造工程を監視して記録する工程管理システム
HACCP(ハサップ)は、1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理方式。原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析し、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視して記録する工程管理システムである。
今回の調査は、全国の食品関係企業(製造業、卸売業、小売業、飲食業)7258社に対して実施された。有効回収数は全体のうち2560社で、回収率は35.3%となった。回収数の内訳は、製造業が1679社、卸売業が601社、小売業が217社、飲食業が63社。
HACCP導入企業は37.5% 35%の企業が導入予定と回答
食品製造業者に対してHACCP導入への取組状況を聞いたところ、37.5%の企業が「導入している」と回答した。また、「数年以内に導入予定である」が7.8%、「将来的には導入予定である」が27.5%で、これらを合わせると、食品製造業者のうち72.8%がHACCP導入に意欲的であることが分かった。
また、実際に導入(取得)済み、もしくは今後導入(取得)予定のHACCP関連の認証の種類(複数回答)についての質問では、総合衛生管理製造過程承認制度(マル総)や業界団体、自治体による認証などの国内のHACCP認証が52.3%、国際的なHACCP認証とされるFSSC22000、ISO22000などを導入(取得)済み、もしくは今後導入(取得)予定の企業は26.6%だった。
EU(欧州連合)や米国などへの農林水産物や食品の輸出促進と関連し、国際的なHACCP認証が必要となってきており、その点が今後の課題とされている。
27%が「HACCPの義務化は必要」
さらに、食品製造業者に対し、HACCP導入の義務化の必要性について聞いた結果、「必要性を感じる」と回答した割合が27.7%、「必要性を感じない」との回答割合が18.8%、「どちらとも言えない」が53.5%の割合を占めた。