国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、CO2分離・回収コストの大幅な低減を図ることが期待される固体吸収法について、実際の石炭火力発電所で燃焼排ガスを用いたパイロット規模の試験を行う研究開発に着手する。
委託先として川崎重工業(株)と(公財)地球環境産業技術研究機構を採択し、石炭火力発電所の燃焼排ガスを活用した長期連続運転によるCO2分離・回収試験を行う。2030年までに固体吸収法の技術確立を目指す。
CO2排出量の大幅削減にはCO2を分離・回収し、地中への貯留(CCS)や、原料として利用するカーボンリサイクルを進めていくことが重要。固体吸収法により、分離回収コストを現状の4000円程度から2000円台に低減できる可能性がある。
経済産業省は、2016年6月に策定した「次世代火力発電に係る技術ロードマップ」で火力発電からのCO2分離・回収を重要項目と位置付けた上で、2019年6月の「カーボンリサイクル技術ロードマップ」で重要なCO2分離・回収技術として固体吸収法を挙げた。
また、今年1月の「革新的環境イノベーション戦略」ではカーボンリサイクルの基盤となるCO2分離回収の技術確立・適用に向け、燃焼排ガス用の固体吸収法に関する研究開発を進めていく方針を示している。CO2の吸収に固体吸収材を利用する固体吸収法はCO2吸収液を用いる化学吸収法と異なり、吸収したCO2の脱離に要するエネルギー消費量を低減できることからエネルギー効率の高い技術として期待されている。
NEDOは、2018年から石炭火力発電所向けに固体吸収法の実用化に向けた研究開発に取り組んできた。これまで革新的な固体吸収材の開発を進めてきており、ベンチスケール試験では目標であるCO2分離・回収エネルギーの達成と、実用化を見据えた設備大型化へのめどを付けた。
これまでの成果を踏まえ、NEDOは実燃焼排ガスを用いた固体吸収法のスケールアップ試験を実施することにした。石炭火力発電所に試験設備を設置し、長期連続運転によるCO2の分離・回収試験を行う。併せて固体吸収材の性能向上や製造技術・シミュレーション技術の高度化を進め、成果をスケールアップ試験に反映させる。