理化学研究所と国立がん研究センターの研究チームは20日、人工知能(AI)を使って早期胃がんを高精度で検出できる仕組みを開発したと発表した。検診に用いることで胃がんの見逃しが減り、早期の発見・治療につながることが期待される。
早期の胃がんには自覚症状が少なく、進行しても症状が胃炎や胃潰瘍に似ていることから、がんだと分かったときにはかなり進行しているケースがある。そのため、内視鏡を使用した早期発見が重要になってくるが、画像診断の正確さは医師の経験に大きく依存し、専門医であっても発見が難しいという。
■ 大量の画像で「ディープラーニング」
そこで研究チームは、患部が正常な胃の画像100枚と、早期胃がんの画像100枚を用意。そこから細かく切り出した約2万枚の画像を、約36万枚に加工し、AIに「ディープラーニング」という手法で学習させた。その結果、コンピューターが「正常(=がんでない)」と判断し、実際に「正常」だった割合は83.6%。「がん」だと判断して、実際に「がん」だったケースは93.4%にのぼった。画像1枚にかかる処理時間は、画像の入出力にかかる時間を除き、1枚あたり4ミリ秒(0.004秒)で、将来の臨床現場でのリアルタイム自動検出には十分な速度を実現している。
■ 今後は早期がんの画像集めを推進
研究チームは今後、日本消化器内視鏡学会とともに、早期胃がんの画像をより簡単に収集するルートを確立したい考え。さらに、理研の科学技術ハブ推進本部 医科学イノベーションハブ推進プログラムと連携することにより、大量の医療データを自動的に収集し機械学習する仕組みを構築する予定だ。これらによって、さらに早期胃がんの検出精度を向上させ、臨床現場で医師の判断を支援する知能としての早期実用化を目指す。