10月1日から、一定以上の所得がある後期高齢者(75歳以上)の医療費の自己負担が2割へ引き上げられる。対象者は約370万人。後期高齢者全体のおよそ20%にあたる。こうした制度改正の趣旨や引き上げの要件などをまとめた。
見直しの背景には、やはり急速な高齢化の進展がある。後期高齢者の医療費は、今年度の予算ベースで18.4兆円。このうち、現役世代が負担している分はおよそ4割の6.9兆円にのぼる。
後期高齢者の医療費は今後も変わらず増えていく。現役世代の負担も重くなっていく一方で、国の試算によると2025年度までに8.1兆円へ膨らむ見通しだ。自己負担の引き上げはこうした状況を踏まえ、一定以上の所得がある人に能力に応じた支払いをしてもらう狙いがある。
取材に応じた厚生労働省の担当者は、「いわゆる〝団塊の世代〟が2025年にかけて後期高齢者となっていくなか、現役世代の負担が急増している」と説明。「今回の見直しは、現役世代の負担を抑えて国民皆保険を未来へとつないでいく、という趣旨で実施する」と理解を求めた。
誰が引き上げの対象となるのか。それは個々の後期高齢者の課税所得や年金収入などをもとに、世帯単位で判断されていく。具体的には、次の要件に当てはまる後期高齢者の自己負担が2割となる。実際に対象となったかどうかは、今月にも自治体などが交付する被保険者証で確認できる。
・ 2割負担の対象者
課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯なら200万円以上、複数世帯なら計320万円以上
※ 年金収入には遺族年金・障害年金を含まない。課税所得145万円以上など、現役並みに所得のある後期高齢者は引き続き3割負担のまま。
厚労省は今回、いわゆる〝受診控え〟を防ぐため自己負担が2割となる人への配慮措置(激変緩和措置)も用意している。期間は2025年9月30日までの3年間。1割負担と比べた場合の外来の負担増を、最大で1ヵ月3000円までに抑えていく内容だ。この配慮措置は、超過分を後から払い戻す高額療養費の仕組みで運用される。
政府内では現在、2024年度の介護保険制度改正で高齢者の利用者負担を引き上げることの是非が検討されている。大枠の方針は今年の年末に決まる予定。そこに至るまでのプロセスでは、こうした後期高齢者医療制度の負担のあり方も参考に議論が進められることになる。