2020年3月16日 6.3倍に性能向上 国立環境研、スパコンシステムを全面更新

大気汚染や水質汚濁などの地域的な環境問題から、化学物質による環境影響、さらには地球温暖化の予測や影響評価など、幅広い環境研究に学際的かつ総合的に取り組んでいる国立研究開発法人国立環境研究所は、スーパーコンピュータシステムを全面更新し、3月から利用を開始した。

今回導入したのは、NEC製の「SX‐Aurora TSUBASA A511‐64」という機種と、インテルの高性能プロセッサーを搭載した「HPE製Apollo2000」を組み合わせたシステム。

NEC製スパコンは2017年10月に発売されたもので、昨年11月末をもって運用終了した「SX‐ACE」の後継機として導入した。

この新機種の理論演算性能は、622.8テラフロップスと、前機種に比較して約6.3倍の性能向上を実現している。

このため、気候システム、降水システム、陸面水文過程、流域環境、地球流体力学、エアロゾル、オゾン、衛星リモートセンシングなど多岐にわたる計算プログラムにおいて、高い演算性能が期待される。

また、高い性能と高度な信頼性を備えたスカラー処理用計算機システム「HPE製Apollo2000」を導入。汎用CPUにより多種多様なアプリケーションを実行できるため、大気汚染予測をはじめ、化学物質の量子化学計算、ゲノム情報の解析など、多様な計算用途での利用が予定されている。

計算機の性能向上に伴い、出力される計算結果も増加することから、プログラムや計算結果の保存先であるファイルシステムの容量を大幅に増強し、前機種に比べて約13倍の容量増を実現した。

環境研では、大気や海洋における複雑な自然現象の再現や予測を長期かつ全球的にシミュレーションし、また地球上の生物個体や環境の情報を過去から現在にわたり蓄積して解析する膨大な処理など、地球環境の中で起こるさまざまな現象・問題を扱う研究の進展に向けてスパコンシステムを利用している。

 

大気汚染予測や異常気象の発生、地球温暖化研究などを進展

今後、昨今さまざまな観点から指摘されている異常気象の発生と地球温暖化の関係についての数値実験、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に求められた気候変動将来予測、放射性物質の動態予測、オゾン全景最低値の経年変化シミュレーション、東京湾や瀬戸内海の閉鎖性海域の環境予測など、スパコンでしかできないさまざまな研究を飛躍的に進展させていく方針だ。

また、大気汚染予測システムの定常運用をはじめ、大気汚染物質の化学輸送シミュレーション、温室効果ガス動態の長期シミュレーション、化学物質の反応メカニズム解析のための量子化学計算、ゲノム情報の解析、GOSATプロジェクトで利用する大気輸送モデルの開発など、さまざまな研究課題で利用していく。


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