政府目標である「30年後に温室ガス排出実質ゼロ」の可能性を信じているのは、若者の2割未満に過ぎないことが、日本財団が17歳から19歳を対象に行っている意識調査(18歳調査)で明らかとなった。現在の生活スタイルを続ける限り、二酸化炭素の排出は防ぎようがなく、代替エネルギーも見つからないというのが理由。一方で、国民一人ひとりの行動で実現可能という若者もみられた。環境問題に対する若者の多様な意見が浮き彫りとなった。
温暖化、若者の12%が「自然サイクル」
海面水位や温度の上昇、大型台風や高潮、猛暑といった温暖化が影響と考えられる異常気象が頻発しているが、若者の66.7%が温暖化の原因について「人間の社会活動に伴う温室ガスの排出」をあげた。また、地球の自然サイクルと答えたのは12.3%で、21.0%は「わからない」と答えた。
温暖化のリスクに関しては、「知っている」が77.4%で、「知らない」が22.6%。前回調査の2019年と比べると、「知っている」との回答が約10ポイント増加した。わが国の二酸化炭素排出量は、「削減すべき」が73.0%で、「社会のためにやむを得ない」(15.7%)を大きく上回った。「削減すべき」という回答も、2019年調査と比較して約4ポイント増えた。
二酸化炭素の排出を削減するために進めるべき取組としては、「再生可能エネルギーの開発促進」が最も多く66.0%で、大きく2位以下を引き離した。「電気自動車、蓄電池の開発促進」(36.4%)、「家庭、企業の省エネ対策の推進」(33.7%)も上位を占めた。
政府が、2050年までにわが国の温室ガス排出を実質ゼロにする政策目標である「2050年カーボンニュートラル」を掲げていることに関しては、60.4%が「評価する」と答え、「評価しない」(10.3%)を大きく上回った。「わからない」は29.3%。
評価する理由としては、「カーボンニュートラルをしようという目標を具体的に掲げた点に関しては評価したい」「政府自らが目標を掲げたことを評価したい」など、実現可能かどうかは別として、目標を掲げたこと自体を評価する意見が目立った。
このなかには、「目標を掲げて環境について考えるのは良いこと。身近にできることもあるから、少しずつでも実行していこうと思った」「目標を掲げることで削減意識に繋がっていくと思うから」など、政府が目標を掲げることで国民の意識が変化するという声も寄せられた。
一方で、評価しないとの回答者からは、「ゼロにするのは不可能」「実現できなさそう」など、実現不可能であるという声が多い。また、「もう少し具体的で実行しやすい目標を立てるべき」「具体的な政策が決まっていない」などの意見も聞かれた。
30年間の技術発展で実現可能
調査では、2050年カーボンニュートラルの実現可能性に関しても尋ねた。過半数は「わからない」(50.2%)で、「いいえ」は35.4%。「はい」は14.4%だった。少数回答であったもののカーボンニュートラルが実現可能と答えた理由としては、「あと30年もあるので、その間の技術発展により実現可能」など、科学技術の発展により可能になることを期待する声が寄せられた。
また、「一人ひとりの行動次第で不可能も可能になる」「国民一人ひとりの協力があれば」といったここ数年の環境意識の高まりもあり、国民の協力があれば可能といった意見もあがった。
不可能と答えた層に理由を聞いてみると、「現在の生活を続けるためには、再生可能エネルギーだけではエネルギー量が足りない」など、今の生活スタイルを続ける限り、二酸化炭素の排出は防ぎようがなく、今の電気需要に対応できる代替エネルギーは見つからないだろうという意見が多数を占めた。