若者の2人に1人は漠然と〝死にたい〟と考える状態である「希死念慮」を持った経験があることが、日本財団の調査で明らかとなった。背景には人間関係やいじめ、進路不安が多くみられた。また、性被害経験のある人の方が、被害のない人に比べて希死念慮が4割近く高かった。死にたいと思う若者の半数以上が友人にも誰にも相談していない現状も浮き彫りとなった。
日本財団はこの調査を2016年から行っており、今回で5回目となる。調査は全都道府県の18歳から29歳の男女を対象にインターネットを用いて実施した。
調査によると、全体で44.8%が希死念慮を持った経験があり、5人に1人は自殺未遂や自殺準備の経験を有する。希死念慮経験者の4割が自殺未遂経験を持っている。希死念慮の背景をみると、人間関係やいじめ被害、進路不安といった希死念慮の要因になり得る経験を6割が有している。人間関係や死別・離別、いじめ、暴力・虐待、不登校、学業成績、仕事等での困難な経験をいずれも経験したことのない人は、37%に留まる。
希死念慮の要因になり得る経験が重なる人ほど、自殺未遂・自殺準備を経験している傾向にあり、人間関係やいじめなど6つの希死念慮要因になり得る経験を持つ人は、1つも経験がない人に比べて55ポイントも自殺未遂・準備経験率が高いこともわかった。
さらに、小児期に育児放棄や親からの暴力といった逆境的な体験がある人の方が希死念慮経験も明らかとなった。逆境的な体験を一つでも経験している人の7割が希死念慮経験を持つ。逆境的な体験が一つある人の希死念慮経験者割合は70.2%、2つある人は77.7%、3つある人は81.7%、4つ以上の人に至っては91.5%にのぼる。一方で、逆境的経験が一つもない人は34.1%で、4つ以上の人との差は60ポイント近くとなっている。
性被害に関しては、7人に1人が「経験あり」と回答。35人の学校のクラスで当てはめると、性被害経験者は、1クラスに5人にものぼることとなる。性被害経験がある人に、希死念慮経験を尋ねたところ、被害経験者は性被害の経験がない人に比べて約37ポイントも高い希死念慮経験を有していることが判明。家族・親戚・パートナーが加害者である人の希死念慮経験割合は85.5%で、身近な人以外の加害者からの被害と比べて12ポイント高い。「知っている人からの被害経験がある」人の自殺未遂・準備経験者は39.1%にのぼり、「全く知らない人からの被害経験」がある人と比べて約20ポイント高いという。
「SNSで初めて知り合った人」に相談
希死念慮に関する主な相談先は、友人・同級生、家族、知人、スクールカウンセラー、SNS等幅広く、誰もが希死念慮などの相談を受ける可能性がある。一方で、希死念慮も性暴力被害も、どこにも誰にも相談しない割合が高い。希死念慮が生じた際に打ち明けた・相談した相手について尋ねたところ、最も多かったのは「どこ(誰)にも相談しなかった」が最も多く56.6%。1割程度が友人や母親と答えたものの、「SNSで初めて知り合った人」との回答も4.6%あった。自殺に関する公的相談窓口は2.4%に留まった。
性暴力被害後に打ち明けた・相談した相手も、友人・同級生、母親が1割超だったものの、36.8%が「どこ(誰)にも相談しなかった」と回答。性暴力に関する公的な相談窓口は2.6%しかなかった。性被害を相談しない背景には〝恥〟と思わせる社会の雰囲気、希死念慮を相談できない背景には知られたくないという抵抗感が、さらに両方に共通していますぐ相談できない仕組みがある。喫煙や飲酒の健康リスク同様に、性被害をはじめとする希死念慮の要因となり得る経験は大きな健康リスクといえる。このため、日本財団では希死念慮を誰もが知っている状態(公衆衛生として扱う)ことの重要性を強調している。