厚生労働省は11日、麻しん(はしか)と風しんの予防策などに関する指針の改正案を有識者でつくる同省の小委員会に示し、大筋で了承を得た。市町村に対し、国と都道府県がそれぞれ2回のワクチン接種率を95%以上にするよう呼びかけることなどが柱だ。
麻しんと風しんの予防接種は、1歳時と小学校入学前に実施されている。1回の接種では不十分なためで、2つの予防指針ではそれぞれの接種率を95%以上にすることが目標に掲げられている。2016年度の状況をみると、国全体の接種率は、麻しんと風しんともに、1回目が97.2%、2回目が93.1%だった。市町村別にみた場合、1回目が95%に達していない自治体は全体の40.3%にあたる701ヵ所。2回目については、54.9%にあたる954ヵ所が未達成という結果となっていた。
このため、2つの予防指針に関しては、「国と都道府県が各市町村に対し、1回目と2回目の接種率が95%以上になるよう働きかけること」を盛り込むよう提案。都道府県に設置している麻しんと風しん対策の専門会議で、各市町村の接種率を評価し、それぞれの接種率95%達成に向けた提言を行うことも加える見通しだ。
■ 保育士・医療職・空港職員にも「ワクチン接種を勧奨」
さらに、麻しんと風しんの免疫が付きにくいといった理由で定期接種の対象から外れている0歳児や重症化しやすい幼児、免疫不全の人、妊婦などへ接する機会の多い職種に対し、接種を強く勧奨することも書き足す。具体的には、保育所の保育士や医療機関で働いている医療職などを想定している。
また、2つの予防指針では、海外からの入国に関する取扱いが曖昧になっている部分が存在すると指摘。海外からの渡航者と接する機会の多い空港の職員らに予防接種を勧奨するとともに、罹患歴や予防接種歴が不明なまま海外へ渡航しようとする人に対して予防接種を呼びかけるよう追記するよう求めた。
そのほか、現行の風しん指針では、抗体検査の結果でワクチンの接種が必要と判定された人を、確実に予防接種に結び付けることが強調されていないことを問題視。風しんの抗体検査は、約9割の自治体が実施。ただし、アンケートによれば、助成事業で行った検査の結果を把握している自治体は約75%で、そのうちワクチン接種が必要と判定された人で予防接種を受けた人は約3分の1にとどまっていた。そのため、新たな風しん指針では、検査で陰性や保留といった結果が出た人に対して、確実に予防接種まで結びつけるような仕組みが重要だと記載することが決まった。
今年は、3月に沖縄で外国人観光客による麻しん感染者が発見されて以降、沖縄県を中心に感染が拡大。4月には、同県で感染したと推測される患者が、愛知県や川崎市で報告されている。厚労省は4月末に改めて注意喚起の通知を出すとともに、海外渡航者向けのリーフレットを作成し、自治体や関係省庁などを通じて周知を図っている。