魚をほとんど食べない人は、大動脈解離や大動脈瘤といった大動脈疾患で死亡する確立が約2倍になるという研究結果を、国立がん研究センターと筑波大学などの研究チームが発表した。魚の摂取と大動脈疾患による死亡との関連を示したのは、世界で初めてだという。
調査では、がん研究センターによる多目的コホート研究2種類(4万7753人と5万9502人)と、JACC研究(9万791人)、宮城県コホート研究(4万2151人)、大崎国保コホート研究(4万3635人)、三府県宮城コホート研究(2万4038人)、三府県愛知コホート研究(2万8098人)、三府県大阪コホート研究(3万80人)の8調査の参加者、計36万6048人を対象に実施。魚の摂取頻度を「ほとんど食べない」、「月1回から2回」、「週1回から2回」、「週3回から4回」、「ほとんど毎日」の5つに分けて、大動脈疾患の死亡リスクを解析した。
■ 魚を月に1~2回摂取すれば死亡リスク回避
それによると、魚を週1回から2回食べる層と比べ、ほとんど食べない層では、大動脈解離で死亡するリスクが2.5倍、大動脈瘤で2.0倍、これらをあわせた大動脈疾患全体では1.9倍高くなっていた。一方、月に1回から2回食べる層では、魚を週1回から2回食べる層と比べて大動脈解離で死亡するリスクの上昇はみられなかったものの、大動脈瘤で1.9倍とややリスクが上昇する傾向が見られた。一方、週3回から4回食べる層と、ほとんど毎日食べる層では、リスクの大きさは変わらなかった。こうした結果から研究グループは、「魚をほとんど食べない場合は大動脈疾患で死亡するリスクが上がる一方で、少なくとも月に1回から2回食べていれば死亡するリスクは高くならないことがわかった」と結論づけている。
日本では、これまで低かった大動脈疾患による死亡率が、高齢化に伴って近年増加している。大動脈瘤が破裂したり、大動脈が避けたりした場合は現代医学でも急死するケースが多く、その予防が重要になるという。これらの疾患は動脈硬化が原因として考えられており、心筋梗塞と同様に魚がその予防に働く可能性が考えられていながら、その科学的エビデンスがほとんどない状況だった。