1964短期大学制度の創設以来、わが国高等教育行政にとって55年ぶりの大きな教育制度改革に伴い誕生する新たな大学形態「専門職大学院」。来年春の開学に向けて準備が進んでいるが、通信教育をはじめ多岐にわたる教育事業を展開する(株)ベネッセホールディングスの子会社、(株)ベネッセコーポレーションの調査によると、首都圏・関西の高校教員の約7割が、大学や専門学校との違いを説明できないという。また、専門職大学院時代を知らない高校教員も3割以上存在しており、教育現場の認知拡大が課題であることが浮き彫りとなった。
55年ぶりの教育制度改革
社会情勢がめまぐるしく変化するなか、産業を支える人材に求められる能力も大きく変化しており、新たなモノやサービスを作り出せる人材の育成の重要性が高まっている。経団連が企業に対して実施したアンケートでも「主体性」「実行力」「課題設定・解決能力」「創造力」など、新しい価値を創り出すために必要な能力が、高いスコアを示している。
来年4月にスタートする専門職大学院は、こうしたなか、大学レベルの知識と実践的な職業能力の両方を身に付けた人材を育成する教育機関として設立するもの。55年ぶり大きな教育制度改革で、時代の専門職人材の育成を担うものとして、産業界を中心に大きな注目を集めている。
専門職大学への期待、肯定・否定、いずれも3割
ベネッセが今年6月に実施した調査は、高校教員408名を対象に実施。入試結果説明会に参加した進路指導担当高校教諭らに対して書面により行った。「専門職大学が設立されるという動きを知っているか」との質問には、75%が「知っている」と回答したが、専門職大学と既存の大学・短大・専門学校との違いを生徒に説明できるか聞いたところ、「できる」と答えたのはわずか29.2%。68.9%が「できない」と回答した。
専門職大学院への期待についても聞いた。「とても期待できる」としたのは1.2%、「まあ期待できる」が30.6%と肯定的な意見は約3割。一方、28.7%が「あまり期待できない」、2.9%が「まったく期待できない」とネガティブな意見も約3割だった。32.6%は「知らないのでわからない」と答えた。
専門職大学に求めることに関するアンケートでは、「資格取得支援の充実」「高い就職率」の二つが最も多く36.3%。次いで「現代の社会ニーズに対応した人材育成」(30.4%)が3番目に多く、以下、「インターンシップの充実」や「既存の高等教育機関とは異なるユニークさ」をあげる高校教諭の声が目立った。一方、「期待できる点はない」との回答も、わずかながらもあった。
専門職大学の創設で懸念することとしては、「学位の社会的評価」が最も多く47.3%。次いで29.9%が「既存の大学や専門学校との違いがわからない」、「企業ニーズが不明」をあげた。さらに、「就職先や就職率」「実習先の充実」「入試の難易度など」といったことも懸念事項として答えた。
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ベネッセでは、専門職大学院シンポジウム「次代のプロフェッショナルを育む大学へ―55年ぶりの新制度『専門職大学』とは―」を11月25日に東京・丸の内のステーションコンファレンス東京5階のサピアホールで開催する。東京専門職大学(仮称)の来春開設を予定している学校法人敬心学園の小林光敬理事長らによる専門職大学院の事例紹介とともに、同じく来春開設を目指しているi専門職大学(仮称)の中村伊知哉学長らによるパネルディスカッション「専門職大学に期待される人材育成」などが行われる。