今年も残り4ヵ月となり、間もなく忘年会シーズンを迎えるが、飲み放題に関する研究成果が、このほど発表された。飲み放題とそうでないケースを比較した場合、飲み放題の方が男子学生で1.8倍、女子学生で1.7倍増加するという。筑波大学の研究グループによる調査で明らかになったもの。研究グループでは、大学生に対して飲み放題の利用が自分たちの飲酒量に与える影響を知ることの必要性を強調し、さらにサービスを提供する店側に対しても、あり方を議論する必要があるとしている。
この調査を行ったのは、筑波大医学医療系の吉本尚准教授ら。関東31大学35学部の学生533人を対象に、飲食店での飲み放題に関する横断的調査を行った。その結果、95.8%の511名の学生が飲み放題を利用したことがあると回答。利用経験のある学生に対して、飲み放題利用時の飲酒量と非利用時の飲食量について具体的な飲食量を聞いた。さらに、飲食頻度、1回飲食量などを聴取することで、飲み放題とそうでない場合の飲酒量の差異を明らかにするための統計解析を行った。
調査の結果、飲み放題でない場合の飲食量に比べて、飲み放題では、男子学生で1.8倍、女子学生で1.7倍に増加していることが明らかとなった。また、男子学生の39.8%、女子学生の30.8%は、飲み放題の場合のみ、一時多量飲酒(HED)という危険な飲酒をしていることもわかった。
HEDは、WHOに定義によると、性別を問わず1回の飲酒機会で純アルコール60kg以上摂取した場合の状態を示す。ビール500ミリリットル×3、日本酒3合、さらにウイスキーだと「アルコール度数43%ダブル・60ミリリットル」を3倍、チューハイだと7%のものの350ミリリットル缶を3缶飲んだ状態。
日本人の4~5割はアルコールに弱い体質
海外の研究でも、〝all‐you‐can‐drink(飲み放題)〟が短時間で多量飲酒のリスクを2.44倍高めたり、アルコール血中濃度と強く関連していることが明らかにされている。特に、日本人の4~5割はアルコールが飲めない、あるいはとても弱い体質であることが明らかにされている。これらの学生が飲み放題利用時に、通常より2倍近いアルコールを摂取している可能性があることは、極めて危険といえる。
吉本准教授らは、今回の研究えられた成果を一般化するために、全国の大学に関する同様の横断研究、飲み放題ではなぜ飲酒量が増えるのかという要因に関する質的・量的調査を、今後展開する必要性を強調。将来のわが国を担う大学生が、アルコールに関する正しい知識を持ち、アルコールと上手に付き合いながら社会で活躍するための礎を築く必要があるとしている。さらに、大学生に対して飲み放題の利用が自分たちの飲酒量に与える影響を知るとともに、サービスする側もあり方を議論することを求めている。