国立がん研究センターは2日、食物繊維の摂取量と死亡リスクの関連に関する研究結果を公表した。食物繊維を多く取る人は、取らない人よりも男性で23%、女性で18%、死亡リスクが低下していた。
調査は1995年から2016年にかけて、岩手県や秋田県、長野県など11ヵ所の保健所圏内に住んでいた45歳から74歳を対象に行った。このうち、食事調査アンケートに回答し、がんや循環器病になっていなかった約9万人の結果とその後の死亡リスクの関係性を分析。食物繊維の摂取量ごとに5つに分類した。年齢や地域、肥満度、喫煙、飲酒、糖尿病、コーヒー、緑茶、食塩摂取量といった影響は、可能な限り取り除いた。
それによると、男性で食物繊維を最も多く摂取している人は、最も少ない人よりも循環器疾患で死亡するリスクが20%低かった。女性も最多摂取の人は、最小摂取の人よりもリスクが27%低い。一方、がんによる両者の死亡リスクの差は、男性が21%だったのに対し、女性は関連性が見られなかった。
摂取源ごとに食物摂取量別の死亡リスクを調べたところ、豆類は男性が最大9%、女性が最大11%、野菜類は男性が最大17%、女性が最大15%、果物類は男性が最大15%、女性が最大16%の差があったものの、穀類においては男女ともそうした傾向がみられなかった。
研究結果を受け、がんセンターは、「日本人においても食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低いことが明らかになった」と指摘。食物繊維は、血圧・血中脂質・インスリン抵抗性などに良い効果を及ぼすことがあると報告した。
また、欧米の研究では、穀類由来の食物繊維の摂取量が多いと死亡リスクが低くなるという報告があるが、今回の研究では豆類や野菜類、果物類由来に比べて、穀類による食物繊維摂取量の差による死亡リスクの高低がなかった。これについては、欧米と比べて日本では、穀類の中心が食物繊維含有量の少ない精白米であることが理由として考えらると説明。日本人の場合、食物繊維の摂取量を増やすために豆類や野菜類、果物類由来の食物繊維摂取量を増やすか、より食物繊維含有量の多い穀類(玄米、シリアル、全粒粉パン等)による食物繊維摂取量を増やすのがよい可能性があるとしている。