(公財)自然エネルギー財団は、報告書「風力発電の導入拡大に向けた土地利用規制・環境アセスメントの検討」をとりまとめた。自然エネルギー財団では、急速に拡大している世界の風力発電導入量に対し、日本での導入が遅れている要因として、「送電網への接続制限だけでなく、日本の土地利用規制や環境アセスメント制度のあり方が大きく影響している」と指摘している。その点を踏まえ、報告書では、こうした制度のあり方が検証されているほか、制度の改善に向けた方向性が提示されている。
報告書の第1章では、日本と海外の土地利用制度の違いが確認されているほか、風力発電導入先進国であるドイツと米国の土地利用制度の内容が整理されている。ドイツや米国では、それぞれの土地利用制度の中で開発可能エリアを特定するなど、風力発電設備の適切な立地への誘導を目指しており、自然エネルギー導入に対する高い目標が州や自治体レベルで設定されつつある。この章では、こうした点を踏まえて、初期段階では必ずしも適切な位置付けや規制のなかった風力発電設備に対して環境の確保と開発の促進を両立する規制へと見直す動きが進んできた状況が紹介されている。
また、風力発電には、設置のために独占的に必要とする面積が極めて小さいという特徴がある。欧米では、農業と共生している風力発電は多くの実例があり、日本でもかつては農地で大規模な風量発電開発が実施されてきた。この点を踏まえ、第2章では、日本の農地利用制度の現状と課題を整理した上で、風力の立地に適しているにもかかわらず厳しい土地利用規制により設置が困難とされてきた経緯と現状が説明されているほか、改善策が提案されている。
第3章では、風力発電における環境影響評価制度にスポットライトをあて、日本と海外の状況を踏まえた上で、課題の整理や、具体的改善策の提示を行っている。具体的内容としては、ドイツや米国では、簡易アクセスによるスクリーニングプロセスを設けるなど、柔軟性のある運用を行っていること、政府や自治体が自然環境情報データベースを整備し、事業者が活用できるようにしていることで、平均的に日本より短い期間でアセスメント調査が終了していることなどが紹介されている。
第4章では、都道府県の役割に焦点をあて、意欲的な導入目標を掲げ、県主導の風力開発事業者の募集を行っている福島県の事例などが紹介されている。