2022年3月30日 順大に「好酸球性鼻副鼻腔炎」専門外来 国内初設置、最新機器用いた手術を実施可能

順天堂大学では、難治性・再発性の鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎で指定難病である「好酸球性鼻副鼻腔炎」の専門外来を、同大3附属病院で開設した。設置したのは、医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター耳鼻咽喉科の池田勝久特任教授、浦安病院耳鼻咽喉・頭頸科の伊藤伸准教授(科長:肥後隆三郎教授)、順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科の中村真浩助教(科長:松本文彦主任教授)のグループ。同大によると、好酸球性鼻副鼻腔炎専門外来の開設は国内で初めてとなる。

好酸球性鼻副鼻腔炎は2000年以降提唱された疾患概念で、副鼻腔粘膜または鼻ポリープに著明な好酸球浸潤を伴う易再発性の慢性鼻副鼻腔炎の総称。2015年から指定難病に認定された。血液中のリンパ球の一種である好酸球は、一般的に喘息、アレルギー性鼻炎などの病気を引き起こすとされており、好酸球性鼻副鼻腔炎は、喘息を持っている人、または喘息予備軍の人に多く認められる疾患。50歳前後での発症が多く、最近の疫学調査から、国内で約100~200万人の慢性鼻副鼻腔炎患者のうち約20万人が好酸球性鼻副鼻腔炎で、さらに約2万人が重症症例と考えられている。

主な症状は、嗅覚の低下や鼻詰まりが特徴的な症状とされているが、このほかにも、鼻水(粘稠、ニカワ状、膿性、粘液性など)、後鼻漏(鼻水がのどへ落ちること)、頭痛や頭重感、頰の痛み、咳(喘息の合併)、難聴(好酸球性中耳炎の合併)など、呈する症状はさまざま。

①鼻の両側での病巣の有無、②鼻茸の有無、③両目の間にある篩骨洞の陰影の優位性、④血中好酸球の割合について、その項目を点数化(17点満点)し、「スコアの合計が11点以上」かつ「鼻茸組織中の好酸球数(400倍視野)が70個以上」の両方を満たす場合、好酸球性鼻副鼻腔炎と診断される。そのうえで、「重症度分類(末梢血好酸球率、CT所見、合併症の有無による指標に基づき分類)で中等症以上」もしくは「好酸球性中耳炎を合併している場合」が指定難病の対象となる。

好酸球性鼻副鼻腔炎は、早期から嗅覚障害を示し、両側で多発性の鼻ポリープを認め、極めて粘稠な鼻漏が特徴的。ステロイド剤の内服で軽快するが、ステロイド剤の長期投与は免疫能の低下、糖尿病、骨粗鬆症などの副作用の危険性があるため、安易な服用は避けた方が良いとされている。鼻噴霧用ステロイド剤やステロイドの内服によってもコントロール困難な場合(全体の約20~40%)は手術適応になるが、手術後の再発率は約25%と高率となる。

今回開設した専門外来では、安全な内視鏡下副鼻腔手術による徹底した病変の除去、副作用を最小化したステロイド療法、更には生物学的製剤などの治療を、それぞれ病状に合わせて相談しながら実施する。

また、最新の手術支援機器を併用した内視鏡下副鼻腔手術も実施可能。ステロイド剤の投与でコントロール困難な場合は、手術の適応となる。専門外来では、ナビゲーション装置、マイクロデブリッダー(鼻内組織の切除と吸引を同時に行える手術機器)、ハイドロデブリッダー(副鼻腔手術用の高圧洗浄機)など最新の手術支援機器を併用し、内視鏡下副鼻腔手術によって徹底した病変の除去を安全に行う。

重症の好酸球性鼻副鼻腔炎への生物学的製剤治療も、専門外来で行える診療の一つとなっている。手術後に鼻茸の再発を認めた症例や、全身的ステロイドの抵抗症例など、既存の治療法では対処が難しい重症の好酸球性鼻副鼻腔炎では、生物学的製剤であるデュピルマブを用いた治療も行っている。この場合、2週間ごと(症状が安定している場合は4週間ごと)に皮下注射を行う必要がある。自己注射も可能なため簡便だが、高額な薬剤であるため厳密な適応が求められる。

また、デュピルマブの有効性は、大規模臨床試験で証明されており、嗅覚の改善や鼻閉の改善が見込まれている。保険診療の3割負担の場合、月に約3万円の薬剤費が必要となるが、指定難病の認定によって、医療費の助成を受けることが可能。


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