2023年11月27日 障害福祉の報酬改定、過去にない激変の様相 制度が大きく変貌 自立支援に舵【小濱道博】

(1)障害福祉での機能訓練の方向性

来年度は6年に一度の〝トリプル改定〟である。介護報酬、障害福祉報酬、診療報酬の議論が同時進行の形で進んでいる。

その中で、障害福祉報酬のある動きに注目している。

それは、「医療型短期入所サービスの指定申請をする際に、介護老人保健施設の指定申請で提出している書類と同様の書類がある場合は省略可能とする」という点。もう1つは、「介護保険の通所リハビリテーション事業所において、共生型自立訓練(機能訓練)の提供を可能とする」という点である。

 

(2)医療型短期入所サービスとその問題点

まず、医療型短期入所サービスを取り上げたい。

このサービスでは、重症心身障害児・者、進行性筋萎縮症の者(障害支援区分5以上)、気管切開を伴う人工呼吸器をつけている者(障害支援区分6)など、いわゆる 〝医療的ケア児・者〟を対象として、1日、日中、夜間にショートステイを提供する。

施設は「併設型」や「空床利用型」が一般的だ。その対象外の利用者についても、「福祉型短期入所サービス費」 や「福祉型強化短期入所サービス費」の基本報酬で受け入れることができる。

基本的な役割は、家族のレスパイト、家族の急病や仕事など緊急時の支援、本人の発達支援・成⻑支援などである。制度上の対象者は0歳から64歳までだが、施設の特性によって障害児のみ・障害者のみなど限定できる。介護者らの休養を目的とした短期利用であるため、計画の作成は不要。送迎した場合は送迎加算を算定できる。

問題は、レスパイト機能が主な役割のため、リハビリに対する報酬上の評価がないこと。今回、このテーマを取り上げた理由は、制度上の大きな変革の前兆が見て取れるからだ。

また、老健サイドでも、この医療的ショートを取り入れる検討が進んでいる。老健の指定申請手続きの軽減措置も、その動きを反映したものと推察される。

老健が取り組む理由は、18才以上を対象とした障害者の日常生活の向上、社会参加の促進であろう。すなわち、障害者に対するリハビリテーションの提供だ。この辺りの評価が審議過程でどう取り上げられるかが、今後の普及のポイントとなる。

 

(3)通所リハビリテーションの共生型自律訓練

そして、通所リハビリテーションの共生型自立訓練である。これは障害者の身体機能・生活能力の維持、向上などに関する支援ニーズへの対応であり、障害者へのリハビリテーションの提供が目的となる。

これまでの障害福祉サービスは、機能訓練による社会参加、就労支援という観点が甘かったと感じる。共生型自立訓練がその起爆剤になるかもしれない。

しかし問題は、2018年度改定で介護保険に共生型サービスが創設されて以来、いまだに普及が進んでいないことにある。職員が不安を感じることも一因のようだ。利用者が障害者と同じスペースにいることを好まないだろう、といった先入観を持っているケースも一部にある。

ただ実際には、複数のデイサービスで共生型生活介護を併設している事業所の業績は好調だ。

あるデイサービスは、短時間のリハビリデイで障害者にも機能訓練を提供している。夜によく眠れる、気持ちが落ち着くなど概ね好評である。体調も改善されており、就労支援に移行した利用者もいる。親が要介護者、子供が障害者の親子は、一緒にデイサービスに通っている。

障害福祉サービスにおける自立訓練は、利用者数、事業所数ともに低位のまま推移している。事業所が1ヵ所もない都道府県もある。介護保険のデイサービスや小規模多機能型では、既に共生型自立訓練(機能訓練)の実施が可能となっているものの、入浴・排せつ・食事などの介護の提供が中心となるこれらのサービスは、障害者の身体機能・生活能力の維持、向上に向けた支援ニーズに十分に応えられていない。

そこで白羽の矢が立ったのが、これまで共生型が設けられていない通所リハビリテーションである。これを受けて、介護報酬改定を議論する審議会でも、共生型通所リハビリテーションの創設が論点として示された。問題は、どれほどの事業所が共生型自立訓練に興味を示すかである。

 

(4)障害福祉も自立支援に方向転換か

来年度の障害福祉報酬改定は、過去にはない激変の様相を呈している。障害者グループホームに1人暮らしの支援を求める。就労支援も先にある階段として、一般就労を明確にしてきた。今後の制度の方向は、一般就労への移行や1人暮らしの支援といった自立に向いていくだろう。単なるレスパイトから自立支援に大きく舵を取りつつある。

コロナ禍が明けて、人々の価値観やニーズが大きく変わった。一般でもエクササイズを24時間気軽に利用できる安価なサービスが急成長している。レスパイト中心のデイサービスが稼働率を落とし、リハビリ型デイサービスが各地で不足している。

もはや、リハビリテーションや機能訓練は介護サービスにおいては必須となっている。介護保険より長い歴史を持ち、制度として熟成した感のあった障害福祉が、自立支援へ大きく変貌する方向が見えてきた。時代はいま、大きく変わろうとしている。


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