東北大学などのチームが報告した研究の結果では、高齢者の「閉じこもり」と口腔の健康には深い関わりがあると指摘されている。歯が少ない人や入れ歯をしていない人は、そうでない人よりリスクが上がるという。言葉や表情、咀嚼能力に影響し、他人とのコミュニケーションを難しくしたり栄養状態を悪化させたりするため、会話や外出をためらうケースがあるとみられる。
研究は65歳以上の4390人が対象。2006年度から2010年度まで追跡し、歯の本数や入れ歯の使用が閉じこもりと関係しているかどうか調べた。閉じこもりの定義は外出の頻度が週1回未満。
それによると、2010年度の調査で新たに閉じこもりとなっていた人は7.4%。口腔の状態ごとに分けると、
・ 歯が20本以上ある人は4.4%
・ 19本以下で入れ歯を使っている人は8.8%
・ 19本以下で入れ歯を使っていない人は9.7%
‐となっている。年齢別にみると、75歳以上の「後期高齢者」では大きな差が見られなかった。一方、65歳から74歳までの「前期高齢者」は違いが目立つ。所得など他の要因を調整した後も、「19本以下で入れ歯を使っていない人」が閉じこもりになるリスクは、「20本以上ある人」の1.8倍にのぼったという。
研究レポートでは、「歯が少ないことが閉じこもりのリスクと関連しており、入れ歯を利用していないとより高くなることがわかった」と説明。「身体的な理由で外出が減ってしまう後期高齢者より、比較的全身状態の良い前期高齢者において、口腔の健康が閉じこもりに強く影響している」とまとめている。
高齢者の閉じこもりは、「廃用症候群」や寝たきりにつながってしまうケースが少なくない。これまでの研究では、年齢や性別、結婚の有無、心身の状態などがリスク要因としてあげられてきたが、口腔の健康との結びつきについての報告はなかったという。