2016年8月24日 長崎大と東芝メディカルが共同研究 熱帯感染症の早期診断遺伝子検査システム開発へ

長崎大学と東芝メディカルシステムズ(株)は、熱帯感染症や新興・再興感染症を対象とした新たな遺伝子検査システム開発についての共同研究契約を締結するとともに、長崎大熱帯医学研究所内に「東芝メディカルMSラボを設置し、共同研究を開始した。

近年、グローバル化の進展により、デング熱やジカ熱など途上国の病気ととらえられていた熱帯感染症や新興・再興感染症が、発生国だけにとどまらず国境を超えた問題として、公衆衛生だけでなく世界経済にも大きな脅威となっている。

熱帯感染症などの制圧には早期診断が重要で、遺伝子検査は原理的に高感度に検出できるという特徴から将来的な普及が期待されている。しかし、複雑な前処理手順を安全に行うには検査する人に一定の熟練度が要求されるため、検査時間全体の短縮(迅速)や手順の簡易化による非熟練検査者への二次感染防止に課題が残っている。

こうした中で、熱帯感染症などの最新情報が集まりやすく、遺伝子検出手法に関する研究が進められている大学と、実際に使える製品としての実用化を目指す企業が密に連携することによって開発・普及までの時間を大幅に短縮し、迅速かつ簡単で安全な遺伝子検査システムの早期実用化を目指す。

長崎大はグローバルに教育・研究展開し、熱帯感染症や新興・再興感染症の研究で多くの成果を重ね、感染症の制圧に向けて大きな役割を担い、最先端の研究を進めている。一方、東芝メディカルは、遺伝子検査システムを用いた家畜感染症検出キットやコメ品種識別キットを製品化、さらに長崎大と連携し、2015年には判定時間が約11.2分と従来システムに比べて6分の1程度に短縮できる「エボラ出血熱迅速検査システム」を実用化し、ギニア政府に供与した実績がある。また、世界的な課題となっているジカ熱対策のため、ジカウイルスの迅速検査システム開発でも連携している。

長崎大と東芝メディカルは今年7月、学術面からのアプローチとモノ作りからのアプローチを融合させ、さらに完成度の高い遺伝子検査システムの開発を加速させることで合意し、共同研究契約を締結した。これを足掛かりとして、より密接な産学連携を進め、長崎大での研究成果の普及・実用化を加速させる体制を構築していく。東芝メディカルは熱帯感染症診断システムに本格的に参入し、世界に貢献していきたい意向だ。

熱帯感染症や新興・再興感染症の診断では、感染拡大の早期対応のため検査の迅速性が重要。遺伝子検査では「抽出」「増幅」「検出」の3つのステップが必要となるが、現在使用されている検査システムは、後半の「増幅」「検出」だけを自動化、迅速化したものが主流で、前処理となる「抽出」では複雑な手順を手作業で行っている。このため余分な時間がかかり、迅速検査の優位性を十分に生かせていない。また、抽出作業では実検体を扱う非熟練検査者への二次感染が懸念されている。

これらの課題解決に向けて、長崎大と東芝メディカルは連携を強化し、自動抽出システムを開発する。途上国への支援を想定し、「抽出」「増幅」「検出」が、誰でも、どこでも、簡単で安全に行うことができる遺伝子検査システムの開発を進めていく。


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