2021年11月8日 重金属含む鉱山廃水を浄化 もみがら・米ぬかと微生物で実証試験

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、米ぬかを栄養源にした硫酸還元菌の活性を用いて、重金属を含む鉱山廃水を安定的に浄化する廃水処理装置の運転管理技術を確立した。

日本国内には、稼働を休・停止した鉱山跡地が多く存在し、そこでは重金属を含む酸性の鉱山廃水が発生する場合がある。このような場所では、環境への悪影響を防止するために、廃水処理が続けられている。

一般に鉱山廃水は、専用の設備や化学薬品を使って中和処理されるが、近年は、微生物活性を利用した低コスト・低環境負荷の処理技術に注目が集まっている。JOGMECは、農業廃棄物であるもみがらと米ぬかをそれぞれ微生物の栄養源として活用し、硫酸還元菌の働きによって重金属を沈殿除去する装置の開発を行ってきた。しかし、装置内でどの微生物が働いているか未解明だったため、装置の安定的な維持管理方法が確立できていなかった。

産総研とJOGMECは、処理装置に不可欠な微生物の特定と運転条件の最適化に取り組んだ結果、ある硫酸還元菌のみが嫌気度の低い環境に対して例外的に強く、この菌の活性を維持することが、安定な廃水処理に重要であることを明らかにした。この技術は、低コスト・低環境負荷で重金属を含む廃水を浄化できるため、鉱山廃水だけでなく産業廃水への応用も期待できる。

環境問題は常に人々の関心事で、特に廃棄物が地域の自然環境に与える影響には厳しい目が向けられている。採掘を休・停止した鉱山跡地からは、重金属を含む酸性の鉱山廃水が流出し続けることがあり、処理を将来にわたって継続しなければならない。しかし、廃水の中和処理には専用の設備と化学薬品が必要で、コストや環境負荷の低減が大きな課題になっている。

こうした背景のもと、JOGMECは低コスト・低環境負荷の鉱山廃水処理技術(パッシブトリートメント)の開発に取り組み、農業廃棄物のもみがらと米ぬかを栄養源に微生物活性を利用する鉱山廃水処理装置を作製した。

 

装置を大規模化し実証実験

JOGMECの装置内では、異なる2種類の微生物が主に活動している。その1つは有機物の分解菌で、装置の上部で米ぬか由来の高分子有機物を他の微生物が栄養源にしやすい低分子有機物に分解。もう1つは硫酸還元菌で、有機物を栄養源にして硫酸を硫化物イオンに変換する硫酸還元反応を担う。硫化物イオンは重金属と反応して金属硫化物となり、重金属は装置内部で沈殿して除去される。また、微生物はもみがらに定着して増えるため、もみがらは微生物の装置内維持に機能する。しかし、装置内には数千種以上の微生物が存在し、特に、複数種類ある硫酸還元菌のうちどの微生物が重要な働きをしているのかが不明なため、装置を安定的に維持する方法は未解明であった。

現在、JOGMECでは今回開発した装置を大規模化した実証試験を行っており、その装置内の微生物について、産総研とJOGMECは共同で解析を行う。また、米ぬか以外の有機物を使った装置の開発も進め、さまざまな条件の廃水への適用を進めていく。


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