東海4県の新型コロナウイルス感染症への対応のため、特例的な措置として、今年前期において、98%の授業で遠隔授業を実施、後期も、80%の授業で遠隔授業を実施している。総務省中部管区行政評価局は、大学で遠隔授健を有効かつ円滑に実施する方策について調査し、改善方策を検討した。その結果、遠隔授業において、実施方法が学生に十分説明されていないおそれや、質疑応答等の機会の確保による教育効果が十分に担保されていないおそれがあるという状況がみられたとして、12月11日、調査対象の国立大学法人に必要な改善措置を講ずるよう通知した。
調査は、①遠隔授業の有効かつ円滑な実施、②学生のインターネット環境、③学生の心のケアといった視点から、今年7月から12月まで、岐阜大、静岡大、浜松医科大、 名古屋大、愛知教育大、名古屋工業大、 豊橋技術科学大、三重大の管区8国立大学を対象に実施した。
遠隔授業における教育効果の担保
調査の結果、遠隔授業における教育効果を担保するための措置では、○遠隔授業においても、教室で教員と学生が直接対面して行う面接授業に相当する教育効果を担保するため、教員・学生間の質疑応答機会の確保や学生が提出したレポートの教員による添削指導などが必要であり、調査対象の8国立大学では、その旨を教員に周知しているが、今年度前期の遠隔授業において、実際どのように教育効果が確保されていたかを把握していなかった。
また、○調査対象の8国立大学の前期授業及び後期授業における各授業科目の詳細な授業計画であるシラバスについて抽出調査した結果、前期授業では1449のうち855(59.0%)、後期授業でも1377のうち534(38.8%)のシラバスにおいて、質疑応答の機会が設けられているか不明など、教育効果を担保するための措置が行われていないおそれがある。
シラバスによる授業の実施方法の明示については、○8国立大学は、面接授業に代替して遠隔授業を実施しているが、シラバスについて抽出調査した結果、前期においては1449のうち868(59.9%)、後期でも1377のうち481(34.9%)の授業において、面接授業・遠隔授業の別や、遠隔授業の場合その方法が、シラバスに記載されていない。
中部行政評価局は、改善意見(所見)として、8大学全てに対し、○遠隔授業における面接授業に相当する教育効果を担保するための措置の実施状況を把握し、この措置が行われていない場合は必要な対応を行う、○学生が履修登録をする際に、授業の選択や事前の準備が適切にできるよう、全てのシラバスに授業の実施方法(面接授業・遠隔授業の別、具体的な実施方法)を明記するよう要請した。
学生の機器保有状況の把握
学生のPC等の保有やインターネット環境の把握に関しては、学生の通信環境に配慮した遠隔授業の実施方法やインターネット環境が整わない学生の支援などを検討するため、インターネット環境等の調査を実施している。しかし、その実施状況をみると、授業を開始するまでに 1)ルータの貸出しなど個別の支援を行うためには、個人の特定が必要、2)ウェブ会議システムを活用した授業を受講するためには、一定のスペック(OSのバージョンやカメラ・マイク等)が必要、3)ウェブ会議システムを活用した授業やビデオ動画を活用した授業の受講には、一定の通信容量が必要といった要素が把握されていなかった。
また、遠隔授業の受講に必要なインターネット環境等の周知に関して、学生が遠隔授業を支障なく受講するために、どのようなPC等やインターネット環境を整備すればよいかなどの情報が必要であるが、8国立大学中7大学では、1)PC等について、必要な機能などを周知していない、2)インターネット環境を整備するに当たって、通信容量に注意するよう周知していない状況がみられた。
このため中部行政評価局は、改善意見(所見)として、○授業の実施方法の検討やインターネット環境等の整っていない学生に対する適切な支援が実施できるよう、授業を開始するまでに、学生の情報通信機器の保有やインターネット環境の状況を把握すること(8大学全て)、○学生が遠隔授業の受講に必要な情報通信機器を確保することやインターネット環境を整備する上で通信容量に注意することなどの情報を周知すること(岐阜大、静岡大、浜松医科大、名古屋大、愛知教育大、名古屋工業大、豊橋技術科学大)を要請した。
学生の心のケアに関する取組
学生の心のケアにおけるウェブ会議システムの導入に関して、8国立大学9保健管理センターのうち4保健管理センターでは、心のケアを行う方法として、新型コロナウイルスの感染防止、遠隔地に居住している学生等に配慮し、従来から行っている対面や電話等に加え、ウェブ会議システムを導入しているが、5保健管理センターでは、導入していない。また、ウェブ会議システムを導入している4保健管理センターのうち、学生に周知しているのは1保健管理センターのみとなっていた。
中部行政評価局は、改善意見(所見)として、○新型コロナウイルスの感染防止対策や、遠隔地に居住している学生に対する心のケアを行うため、保健管理センターで学生の心のケアを行う方法の一つとして、ウェブ会議システムを導入するとともに、取組を学生に周知すること(静岡大、浜松医科大、愛知教育大、豊橋技術科学大)、○保健管理センターにおいて、ウェブ会議システムを活用したオンラインでの学生の心のケアを行っていることを、学生が把握しやすい方法で周知すること(名古屋大、名古屋工業大、三重大)を要請した。