無報酬で地域のひとり暮らし高齢者や障がい者、ひとり親世帯などを巡回し、生活上の困りごとの相談に応じる「民生委員・児童委員」(民生委員)。高齢化の進展で役割の重要性が年々高まり、さらに児童虐待や災害への備えといった対応すべき課題も広がっているなか、委員自身の高齢化が大きな課題となっている。60歳以上が85%を占めており、委員の平均年齢は24年間で5.5歳もあがり、2016年度時点で66.1歳となった。年間活動も増えており、一人あたりの年間訪問・相談活動回数は160.2回。その他の活動な件数も一人当たり年間114件となっている。活動の難しさから止める人も多く、担い手が不足しており、欠員率は2013年の2.9%から2016年には3.7%に拡大している。
12月の一斉改選前に課題抽出
こうした状況を踏まえて、全国23万人の民生委員の全国組織である全国民生委員連合会(全民児連)では、国民から見た民生委員の印象や認知度に関する調査を、このほど全国1万人を対象に実施した。
2018年現在、約23万人が全国で活動している民生委員の任期は3年間で、今年12月に全国で一斉に民生委員の改選が行われる。調査は、改選を前に、取り巻く環境を整理・調査することで、なり手の増加に向けた新たな施策を打ち出すことを目的に実施。全国10~70代の男女各層を対象として、インターネット調査を実施した。
調査によると、「将来的に民生委員になってみたい」と答えたのは、男女とも10~20代が全体平均(男性17.9%、女性19.3%)よりも高く、20%を超えた。同世代の社会貢献思考の高まりによるものと推察され、特に女性は年代が高いほど民生委員になることに意欲的だった。
さらに、「民生委員の役割や活動内容まで知っている」と答えた人の約4割が「民生委員になってみたい」と回答。具体的な活動内容を周知する運動も、なり手不足解消の重要な一手になることが確認された。
課題は「活動内容」の認知促進
民生委員の認知度に関する調査では、「知っている」と答えた割合は全体の約7割と高いが、役割や活動内容まで知っていると答えたのは7.9%と1割未満。〝存在〟の認知状況の高さに対して、〝活動内容〟の認知促進に課題があることが明らかとなった。概ね年齢層が上がるごとに認知度も高くなり、60‐70代では男性90%、女性93%と、ほとんどの回答者が民生委員の存在を知っていた。
「民生委員に相談したいか」という質問には、46%が「相談したい」または「意向がある」と回答。相談内容としては、「生活の困りごと」が最も多く35%、次いで「地域の困りごと」31%、「高齢者に関すること」30.8%と続いた。
民生委員に充実させてほしい活動内容としては、「高齢者への訪問活動」が最も高く41%で、2位は「子育て家庭などへの訪問活動」26%。また、子ども食堂、子どもの学習支援といった「低所得世帯やひとり親世帯への支援」が4位に入るなど、高齢者、子育て家庭のサポートに関する内容が上位に並んだ。
年代別でみると目立つのが、60‐70代の「災害時要支援者台帳の作成や防災マップづくりなどの災害に備えた活動」の割合で、全国平均(12%)より高く、女性21%、男性15%。増える災害への不安を反映した結果となった。
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全民児連では、民生委員活動への理解促進や負担軽減など活動しやすい環境づくりに今後も取り組む方針だ。