平時より多くの報酬を得られるようにした国の通所介護の「コロナ特例」をどう捉えているか? 介護現場を支える職員にそう尋ねたところ、「評価する」との声が「評価しない」との声を上回ったことが、淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授による調査結果で明らかにされた。
この特例は、新型コロナウイルスの影響を踏まえて今年6月から導入されたもの。利用者の同意を得ることなどを前提に、毎月一定の回数だけ実際にサービスを提供した時間の報酬より2区分上位の報酬を算定できる、という内容だ。感染リスクを下げるために普段より多くの手間、時間、衛生用品などを使わざるを得ない現状が考慮された。厚生労働省はかかる追加的なコストを補完する意味合いがあると説明している。
経営に深刻な打撃を受けた通所介護の救済策だが、利用者・家族の立場で活動している団体などはすぐに批判の声をあげた。事実上の報酬増が自己負担に跳ね返るためで、「事業所の支援は全額公費で」などと訴えている。また、「同意する、しないで不公平が生じる」「支給限度額を超えてしまう問題が起きる」などと指摘する人も少なくない。
結城教授の調査は、先月7日から17日にかけてインターネットで行われた。居宅介護支援や通所介護、訪問介護など、主に在宅サービスの提供を担う職員628人の回答を集計している。
それによると、特例を「評価する」が36.9%、「評価しない」が26.8%、「分からない」が36.3%だった。自由記述の欄には、「社会資源維持のために必要」「業務拡大、経費増大があり助かっている」など好意的な声が寄せられていた。あわせて、「説明に困る」「公平性に欠ける」「利用者負担を増やすことは理解できない」など、改善を求める意見も非常に多く書かれていた。
結城教授は調査結果について、「特例を評価する職員が多かったのは少し意外だった。藁にもすがる思いの事業所にとって大きな支援策だったことが窺える。同時に、利用者負担の増加などに疑問を感じているが背に腹は変えられない、というジレンマを多くの事業所が抱えていることも浮き彫りになった」と説明。「今回は緊急の支援策だったのでやむを得ない面もある。来年4月の介護報酬改定で見直し、利用者負担に影響が及ばないようにして欲しい。支給限度額を超える利用者は特例を使えないので、その部分の不公平も解消すべき」と提案している。