日本はこれまで、気候変動分野の技術や経験に基づき、様々な国際支援に取り組んでいる。このほど、日本が実施している気候変動分野での途上国支援を取りまとめ、わかりやすく途上国等に示すためのイニシアティブが発表された。全ての国が参加するパリ協定の実施に当たっては、国際的な協調の下、効果的な支援を展開していくことが重要であるためだ。今後、このイニシアティブに基づいて、日本の強みを生かしつつ、途上国のニーズに応じた支援を実施していくとともに、国際的なパートナーシップへの参加や、国内外の研究機関・支援機関等とも連携・協働し、パリ協定の実施を後押ししていく。
パリ協定の実施に向け、日本の強みを生かした国際貢献の代表例として、①JCM等を通じた優れた低炭素技術の普及、②知見・経験の共有による適応能力の拡充、③透明性枠組みにつながる人材育成を通じた測定・報告・検証(MRV)の能力向上、④総合的なフロン排出抑制対策に向けた制度構築の促進、⑤気候変動対策と合わせた持続可能な社会への支援をあげている。
JCM等を通じた優れた低炭素技術の普及では、我が国がリーダーシップを発揮して世界に先駆けて実施している二国間クレジット制度(JCM)等を活用し、途上国のニーズに応じた技術支援を今後も積極的に実施。パリ協定の市場メカニズム運用に係る実効性あるルール作りに、我が国が持つJCM下でのクレジット発行等の知見・経験をフル活用して貢献する。
知見・経験の共有による適応能力の拡充では、グローバル及び地域レベルのネットワークを通じ、我が国の知見や技術を活用した途上国での適応に関する理解の促進、政策的な進展の支援に貢献。新たに展開する米国との二国間での協力による成果も活用する。
また、今年8月に国立環境研究所に設置した「気候変動適応情報プラットフォーム」を、気候変動影響の情報に関する国際的なハブ機能を有する「アジア太平洋適応情報プラットフォーム」に2020年を目途に発展。気候変動による農業影響や災害リスクの予測等の気候変動の影響予測計算も実施する。これにより、途上国での科学的知見に基づく適用計画の策定・実施を支援。民間企業によるアジア太平洋地域での適応ビジネスの展開や民間投資も情報面から支援する。
透明性枠組につながる人材育成を通じた測定・報告・検証の能力向上では、日本は、温室効果ガスインベントリの精度向上や隔年更新報告書(BUR)の作成能力向上のため、14年間開催し続けている途上国向けのワークショップを、今後も積極的に充実させる。また、この取組で培った知見・経験をパリ協定の透明性に関するルール作りに反映し、世界全体の着実な排出削減に寄与する。
総合的なフロン排出抑制対策に向けた制度構築の促進では、フロン類の排出削減で基盤となる排出インベントリの作成に係る支援を拡充。また、我が国の知見を活かし、フロン類の回収・破壊・再生処理などのライフサイクル全体で排出量を低減するための能力開発を支援する。
気候変動対策との持続可能な社会への支援では、ASEAN諸国と連携し取り組んできた「環境的に持続可能な都市づくり」を、SDGsの達成に向けたプログラムとして新たに発展させる。