世界的問題である「肥満」。栄養不足・飢餓などの問題で注目されている発展途上国でも、実際には肥満の問題が深刻化しており、ジンバブエの首都ハラレに住むハイティーンの1割以上が肥満または過体重状況にあることが明らかとなった。この調査を行ったのは、大阪公立大学大学院生活科学研究科の大学院生らの研究グループ。ジンバブエの首都ハラレに住む14歳から19歳の子ども423名を対象に、肥満に関する調査を実施した結果、15.8%が肥満または過体重であることが判明した。
また、アンケート調査により、27.1%の子どもが肥満に対する認識が低いことの理由としては、保護者が公的教育を受けていないことや、食習慣に関する知識が不十分なことが有意に関連していた。
研究チームは今後、調査対象年齢を広げ、発展途上国での肥満問題のさらなる解析を進める予定。また、子どもの肥満問題の解決策については、保護者の教育背景にも配慮しながら、子どもたちの食習慣の改善への貢献を目指す。
この研究成果は、国際学術誌「Nutrients」にオンライン掲載された。
進む「食の欧米化」
ジンバブエを含む発展途上国では、「低栄養」が注目されがち。しかし実際には、食の欧米化などの影響により、「肥満」の問題が深刻化している。大阪公立大の研究チームは、若い世代が人口の大きな割合を占めることから、思春期の肥満を予防・改善することが特に重要と考え、子どもの肥満率や子どもたちが肥満をどう認識しているのか、またその認識への要因を調査した。
研究では、母集団の性質を標本に反映させる方法として知られている「層化ランダム抽出」により選出されたジンバブエの首都ハラレの学校に通う14歳から19歳の子ども423名を対象に、アンケート調査とデータ分析で肥満に関する調査を行った。その結果、15.8%が肥満または過体重であり、特に女子で肥満の傾向が高いことがわかった。
肥満が健康上問題であるという認識が低い子どもは27.1%で、女子、14歳から16歳、肥満の子どもに多くみられた。認識の低さには保護者が公的教育を受けていないことや、食習慣に関する知識が不十分なことが有意に関連することが明らかになった。
この研究結果により、栄養教育を行い肥満の認識を向上させる際、保護者が受けた教育背景にも配慮しながら、子どもたちの食習慣の改善に努めることの重要性があらためて確認された。
問題の背景には、文化的な価値観や個人の考え方も関わっているため、研究グループでは、今後の研究では健全な行動変容が図れるよう検討を重ねる方針。将来的には、学校と家族を巻き込んだ子どもたち向けの栄養教育プログラムの実施につなげたいとしている。
この調査を行った大阪市立大学活科学研究科後期博士課程3年生は「肥満に対する認識を高めるべく、肥満予防・栄養教育プログラムを設計し、食生活に関連する疾病から子どもたちを守りたいと思っています」と話している。