2022年4月28日 農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐API公開 対象作物を追加、病虫害小図鑑を合わせた新サービス

農研機構、法政大学、ノーザンシステムサービスは、昨年3月に公開したAI病虫害画像診断システムについて、対象作物をこれまでの4作物(トマト・キュウリ・イチゴ・ナス)にモモ・ブドウ・ピーマン・ダイズ・ジャガイモ・カボチャ・キク・タマネギを加えて12作物に拡充し、「農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐API」として広く商用利用可能な形で4月28日から有償公開する。また、12作物の病害・虫害の生態・防除情報をまとめたWAGRI病虫害小図鑑もサービスの一つとして公開する。

12作物を対象とするこのシステムは、農業現場での情報サービス展開を検討する民間事業者向けに公開され、各民間事業者が実装する診断サービス・診断アプリケーションとして農業従事者へ提供されることを想定している。WAGRIを通した民間事業者への公開によって、導入コストを抑えて迅速に農業現場へサービスが展開されると期待される。また、農業現場に社会実装されることにより、多くの病虫害画像がサーバ上に集積される。これらの画像を有効活用することで判別器の継続的な精度向上が可能になる。この仕組みを農業データアグリゲーションと位置付けて、更なる社会実装の加速を実現していく方針だ。

 

WAGRIを活用してAI病虫害 画像診断システムを低コストで提供

日本の農業現場では多様な病虫害が発生しており、その防除には多大な費用と労力が費やされている。また、近年の地球温暖化の影響で、病害虫による被害が拡大するとともに、これまで発生しなかった病虫害が発生する懸念がある。

また、高齢化する生産者やそれに伴う熟練者の減少への対応、経験の浅い新規就農者・新規参入者の安定営農を支えるために、人工知能(AI)による画像判別を活用した手軽で安価な病害・虫害診断サービスが求められている。こうした中、農研機構は、WAGRIを活用して、AI病虫害画像診断システムを民間事業者に低コストで提供することで、農業現場への迅速な技術普及の取組を続けてきた。

 

8作物の病虫害AI判別器を開発

農林水産省人工知能未来農業創造プロジェクト「AIを活用した病害虫診断技術の開発」により、病害虫AI診断コンソーシアム(代表機関:農研機構、24都道府県の公設試験場ほか、参画30機関)が、2017~2021年の5ヵ年で専門家による確度の高い正解ラベル付き病害・虫害画像を大量に収集し、トマト・キュウリ・イチゴ・ナスの主要病害・虫害に対応できるAI判別器を開発している。

2021年3月には、農研機構、法政大学、ノーザンシステムサービスの三者が、この4作物に対応するAI病虫害判別器をWAGRIから無償で試験公開した。その後、農研機構はさらに、社会ニーズの高い園芸作物や果樹、野菜の主要病害・虫害の画像収集を進めており、今回新たにモモ・ブドウ・ピーマン・ダイズ・ジャガイモ・カボチャ・キク・タマネギの8作物の病虫害AI判別器の開発に成功した。

今回、病害・虫害の基本情報を提供するWAGRI病虫害小図鑑とともに、合計12作物の重要病虫害に対する農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐APIとして商用公開することとした。

 

農研機構AI病虫害画像診断 WAGRI‐APIの概要

現在、無償公開中の果菜類4作物(トマト・キュウリ・イチゴ・ナス)AI判別器に、新たに果樹、根菜類、豆類、葉茎菜類を含む8作物(モモ・ブドウ・ピーマン・ダイズ・ジャガイモ・カボチャ・キク・タマネギ)のAI判別器を追加し、対象作物を12作物に拡充して、「農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐API」として公開する。

この12作物は、生産額が上位に位置する国内の主要な作物であり、付加価値や海外輸出の期待が高い品目を含む。また、この拡充により、診断システムがカバーする野菜の栽培面積は、全国の野菜類栽培面積の3割を超えた。

新たな判別器の作成では、病害虫AI診断コンソーシアムが5ヵ年で培ってきた病害・虫害画像の収集スキームを踏襲し、農研機構独自にモモ・ブドウ・ピーマン・ダイズ・ジャガイモ・カボチャ・キク・タマネギの8作物の主要病害・虫害の正解付き画像12万枚以上を収集した。この画像を元に、法政大学、ノーザンシステムサービスが、これまで機械学習器の開発で培ったノウハウを活用することで追加の画像判別器開発のスピードアップを実現した。

具体的には、追加8作物についても10分割交差検証法による精度が90%を超えるAI病虫害画像判別器を作ることに成功した。

また、先行4作物、追加8作物の主要病害・虫害に対してAI病虫害画像診断が下した判別結果を活用してもらうには、「それがどのような病害・虫害であるか」、「どのような防除が可能であるか」の情報をセットで提供することが有効。そこで、それぞれの病害・虫害の基本情報を提供するWAGRI病虫害小図鑑APIを開発した。基本情報に加えて代表的な病害・虫害の被害画像を閲覧することができる。

3月28日に農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐APIの新たなサービスの概要と契約内容が公開されており、1ヵ月後の4月28日から新たなサービスの利用が可能になる。

農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐APIは、WAGRI利用会員を対象に、有償で公開される。利用開始から1年間は無償で使用できるが、1年後の更新時に更新料が必要になる。また、WAGRIの利用には、事前に有料の会員登録が必要となる。

さらに、「農業データ連携基盤協議会」の会員(WAGRI利用会員とは別で無料)は、AI病虫害画像判別WAGRI‐APIの活用イメージを無料の携帯端末用デモアプリで体験することが可能だ。

 

生産現場での迅速な病害虫 防除判断に有効な情報を提供

農研機構は、今回公開する12作物に加えて、社会ニーズの高い園芸作物や果樹、野菜の主要病害・虫害を対象とする判別器の開発を進めていく方針だ。また、農業現場から診断のために送信された病害・虫害画像を農研機構統合データベースに格納し、機械学習に利用できる形に整形・ラベリングし整備していく予定だ。これらの画像を使って農研機構AI病虫害画像診断WAGRI‐APIの精度を継続的に向上させていくとしており、こうした取組で継続して成長するAI病虫害画像診断システムで生産現場での迅速な病害虫防除判断に有効な情報を提供し、日本の農業に貢献していくとしている。


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