早稲田大学の研究班は28日、埼玉県本庄市に住む高齢者のうち農家だった人の方が他業種だった人よりも、男性で8.2歳長生きしているという調査結果を公表した。農家だった人は、死亡した年齢と健康寿命の差が短い、いわゆる「ピンピンコロリ」の傾向にあることもわかった。
調査はアンケート形式で、今年2月から3月にかけて行った。対象は、市内にある農村部の3879世帯と都市部の1869世帯で、それぞれ543世帯(有効回答率14.0%)、300世帯(同16.3%)から有効な回答を得ている。
調査対象の平均寿命を比べると、農家の男性が81.5歳なのに対し、それ以外の職業の男性は73.3歳と両者には8.2歳もの差があった。女性は農家が84.1歳、それ以外が82.5歳と1.6歳と男性ほどではないにしろ1.6歳の差が生じている。
■ 長い就労期間が健康寿命を伸ばす
研究チームは、両者の寿命の違いから、農家の人の方が農業以外の職業よりも男女ともに就労期間が長く、それが健康寿命の延伸に貢献しているのではないかと推測。男性の場合、農家の平均就労期間は50.8年、農業以外は37.5年で、その差は13.3年。女性の場合は、前者が49.1年、後者が28.0年と21.1年の差があった。さらに、仕事を引退した年齢は、農家の男性が74.2歳、女性が72.8歳と、どちらも70歳代前半まで健康に仕事をこなしている一方で、それ以外の人は、男性が64.3歳、女性が60.8歳と、どちらも定年退職の年齢前後に引退していることが示唆されている。
また、引退後の余命は、農家は男性が7.4年、女性が11.0年なのに対し、農家以外は男性が9.6年、女性が19.3年と、どちらも農家の方が長かった。このことから研究では、農家の人が寿命ギリギリまで元気な「ピンピンコロリ」の傾向にあると指摘している。
そのほか、亡くなった農家の家族に、① 老衰、② 4大疾患(ガン、脳卒中、心臓病、肺炎)、③ その他‐の3つから死因を選んでもらったところ、老衰を選択した割合がそれ以外の職業よりも多いことも判明。65歳以上の高齢者らに20歳以降の入院回数を、1)複数、2)1回、3)なし‐の3つから選択してもらうと、農家はそれ以外の職業よりも、入院体験のない人の割合が多かった。
調査を分析した早大の堀口健治名誉教授は、今後に向け「急速に増加する後期高齢者の医療費を削減するためにも、60~70歳代以降の望ましい活動や生活のあり方など、農家のあり方を1つの事例として研究し、広報する必要がある」と述べている。