大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)は、学術情報ネットワーク「SINET」の国際回線を増強し、日本―米国―欧州―日本をリング状に地球一周する100Gbpsの超高速通信ネットワークとして3月1日から運用開始した。
国の研究教育ネットワーク(NREN)としては、単独機関が地球一周する国際回線を構築するのは世界初。また同時に、日本―シンガポール間のSINETアジア回線も同じく100Gpbsに増強した。
これらの増強により、通信量増加で生じていた学術向け国際回線の逼迫の解消、米国・欧州へそれぞれ2方向から超高速接続しての安定性向上、相互接続している海外の研究ネットワークとの連携強化が実現する。
SINET(サイネット)は日本全国の大学・研究機関などの学術情報基盤として利用されている通信ネットワークで、NIIが構築・運用している。現在運用している「SINET5」は、2016年の運用開始時に全都道府県のSINET拠点間に100Gbpsという超高速回線を構築した。日本全国の大学や研究機関が各地域のSINET拠点に接続しており、日本の学術研究を支える通信ネットワークとなっている。
また、国際共同研究を支えるために、SINETでは日本と米国の間に100Gbps回線と10Gbps回線の計2本、日本と欧州の間に2本の10Gbps回線、日本とアジアの間に1本の10Gbps回線を提供してきたが、共同研究の広がりや先端的大型学術研究の進展により転送データ量が増加している。さらに今後はSociety5.0などの新しい科学技術の発展により、世界中のセンサーなどから取得したデータを集約・利用することが想定される。
この結果、3年前に2本の10Gbps回線を新設した欧州直結回線は急激な通信量増加で回線が逼迫しており、国債共同研究への影響が懸念されていた。また、諸外国の研究ネットワークでは100Gbpsでの国際回線の整備が進んでおり、わが国の研究環境を世界と対等に維持するためには同等以上の速度のネットワーク整備が必要となっていた。国際回線の安定運用化にはバックアップ経路機能も必要となっていた。
超高速化し地球一周化
これらの状況に対応するため、NIIは日本(東京)‐米国西海岸(ロサンゼルス)‐米国東海岸(ニューヨーク)‐欧州(アムステルダム)‐日本(東京)の経路で地球一周するリング状の100Gbps回線を構築した。同時に日本‐アジア(シンガポール)回線も100Gbps化した。
地球一周するリング構成とすることで、SINET国際回線の通信の安定性を高めている。日本と米国を結ぶ回線におけるトラブル時は米国内で相互接続する研究ネットワークを欧州経由で、日本と欧州を結ぶ回線におけるトラブル時は欧州内で相互接続する研究ネットワークを米国経由で、日本に接続し続けることができるようになった。さらに、米国・欧州向けのネットワーク需要変動を負荷分散して吸収することが可能になる。
国際連携研究とSociety5.0に貢献
今回のSINET国際回線の増強は、米国、欧州、オランダ、北欧諸国などの海外の研究ネットワークとの連携・協力により研究教育情報の国際的な流通をさらに円滑化する。日米や日欧、日本アジアの連携研究がより一層深められ、わが国の国際協調・国際競争力がさらに強化されると期待される。また、国際回線間で連携した相互バックアップ体制の構築も進んできており、今後、100Gbps回線の連携・協力はさらに増えていくことがグローバルな学術コミュニティとして期待されている。
国内回線と国際回線の両方が100Gbpsに超高速化されたことで、わが国が目指す未来社会の姿として提唱されているSociety5.0の実現に向け、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度融合の加速にも貢献することが期待される。