2022年9月22日 超高層大気の情報解析支援サービス 登録数1200件超 180以上の研究成果に貢献

国立極地研究所の田中良昌特任准教授を中心とする東北大学、名古屋大学、京都大学、九州大学等の研究グループは、大学間連携プロジェクト「IUGONET」により、多種多様な超高層大気データの複合解析を容易にし、新たな発見をサポートするウェブサービス『IUGONET Type‐A(http://search.iugonet.org/)』を提供しており、多くの研究者が利用し、多数の研究活動をサポートしている。登録データセット数は1200件を超えており、すでに180以上の研究成果に貢献しているという。

高度約50~500kmに存在する超高層大気を理解するためには、太陽から地球大気まで様々な領域で得られたデータを総合的に解析する必要がある。2016年に提供を開始した「IUGONET Type‐A」は、2010年開始の前ウェブサービスを大きく発展させたもので、超高層大気の研究者が日々行っている研究の流れ、すなわち多様なデータの検索、自然現象の発見、データの理解、可視化、解析、論文化という一連の流れをスムーズに接続し、研究活動を強力にサポートするサービス。

太陽から宇宙空間、地球・惑星大気まで1200以上のデータセットが登録されており、「IUGONET」への謝辞を含む査読付き研究論文はすでに180を超えている。超高層大気分野でデータの検索、情報提供、可視化、解析への接続をワンストップで行えるサービスはほかになく、データ駆動型科学、分野横断型研究の発展が期待されるなか、『IUGONET Type‐A』の重要性は増しているといえる。

高度約50~500kmにある大気は超高層大気と呼ばれ、宇宙からは太陽の放射や太陽風高エネルギー粒子の降り込み、下層からは大気波動などの影響を受け、長期的、短期的に変動している。このため、超高層大気の現象を理解するためには、この領域だけでなく、太陽や宇宙空間、下層大気で得られた多種多様なデータを総合的に解析する必要があるが、これらのデータは、複数の大学や研究機関で別々に保存・管理され、組み合わせて利用することが困難だった。

この状況を打開するため、2009年に大学間連携プロジェクト「IUGONET」がスタート。わが国大学、研究機関が個別に持っているさまざまな種類のデータのメタデータを作成・収集して、メタデータのデータベースを開発した。2010年に公開されたこのデータベースを使うことで、容易に目的のデータに辿り着けるようになった。しかし、データに到達できても、そこから即座にデータを解析して研究に繋げることは実現していなかった。

2016年に提供を開始したウェブサービス『IUGONET Type‐A』では、前ウェブサービスに備わっていた機能に加え、研究者が日々行っている一連の研究の流れを強力にサポートする機能が追加された。つまり、(1)データを探し、そこから自然現象を発見→(2)そのデータについて理解→(3)並べて可視化→(4)解析方法を探して検討→(5)詳細に解析→(6)論文にする―という一連の流れを構築した。

ステップ(1)では、検索でヒットしたデータの可視化画像を『IUGONET Type‐A』上で並べて表示することができる。画像の横軸(時間軸)は全てのデータで揃えられており、関心のある自然現象の発見を容易にする。ステップ(2)で関心のあるデータを選ぶと、メタデータや拡大した可視化画像が表示され、データの理解を助ける。ステップ(3)では、複数のデータを自由に並べて可視化・比較。ステップ(4)では、各データを可視化・解析するためのコマンドが表示され、ステップ(5)と(6)の専用解析ツール「SPEDAS」の利用へスムーズに接続する。

専用解析ツールは、多様な超高層大気データを組み合わせて複雑な解析をしたり、論文用の図を作ったりすることができる。

このようなデータの情報提供と可視化、解析への接続をワンストップで行えるウェブサービスは、超高層大気分野では他に例はない。同サービスにはすでに1200以上のデータセットが登録されている。国内外の多くの研究者によって利用され、今年6月末時点で180以上の「IUGONET」への謝辞を含む査読付き論文が出版されている。


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