2021年4月2日 認知度低い、コロナ重症化の状態 トリアージは市民の多数が「創造したことない」

東京医科歯科大学と東京大学医科学研究所の共同研究グループは、新型コロナウイルス感染症の重症患者に対する治療で知られる人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)の使用、さらにトリアージに関する市民の認知度や理解度を把握するため、全国20歳から89歳までを対象とした調査を実施した。人工呼吸器やECMOの認知度は高い一方で、新型コロナが重症化した場合にそれらの医療機器がどのように装着され、患者はどのような状態になるのかといったことに関する認知度は低いことが明らかとなった。

もしものときのために自分が望む医療やケアについて、健常時に繰り返し話し合い、家族や医療者と共有するプロセスである「ACP(Advance Care Planning)」。医療や愛護の方針を事前に決めておくこのプロセスの実施が、新型コロナ感染症に関しても専門家から推奨されていることへの認知は低く、事前にどのような医療を受けたいかについて意思表示をする人が、このままでは増加しないことが予想される。

さらに、新型コロナ感染症治療で、患者の緊急度によって治療の優先順位を決める「トリアージ」が行われる可能性に関しては、想像したこともない市民が多いこともわかった。

 

人工呼吸器装着に器官切開、「知っている」は3割

新型コロナウイルス感染症によって、人工呼吸器やECMOの使用が医学的に必要となったときに、患者や家族が納得した形で意思決定できることは、コロナ禍での医療の信頼性維持のために重要。この意思決定を実現するためには、市民が事前に人工呼吸器やECMOの使用に関する知識を得ていることが必要となる。さらに、治療や介護の方針を事前に決めておく「ACP」の実施が、新型コロナ感染症に関しても推奨されている。

この調査は、医歯大病院が3月10日現在で350人以上の新型コロナ患者を受け入れてきた実績をもとに、ACPを実装するためには、さらなるコロナ重症患者の治療に対する市民の理解を深める必要があることから、実施したもの。新型コロナウイルス感染症東京医歯大生命倫理研究センターの吉田雅幸教授、東大医科研附属先端医療研究センターの神里彩子准教授らが、ネットを通じて2239名を対象に行った。

調査によると、肺炎が重症化した場合に人工呼吸器が必要になる可能性は、約7割が認識している一方で、人工呼吸器の装着には器官切開などが行われることについては「知っている」と答えたのは約3割にとどまった。「何となく知っていた」を含めると、6割超となった。

また、装着時や装着中は鎮静剤を用いて意識レベルを下げる処置が行われることは6割近くが「知らなかった・考えたことがなかった」と回答。ECMOが呼吸不全の常態がさらに重症化した場合に使用する可能性があることを「知らなかった」のは45.2%で、30.2%の「知っていた」を上回った(回答合計75.7%)。

調査では、重症化した場合の医療に関する事前の意思表示に関しても聞いた。ACPが専門家から提案されることについては、「知っていた」が7.9%、「なんとなく知っていた」が21.9%、自身や家族が重症化した場合に受けたいまたは受けたくない医療について家族等と話し合ったことは9割近くが「ない」と答えた。今後家族と話し合うかという問いに対しては、「思うが、実際には難しい」が53.1%、「思わない」が12.4%という結果となった。

トリアージに関しては、トリアージという言葉自体は、6割近くが認知しているものの、ECMOの装着を必要とする患者数に対して台数が足りない場合、装着する患者の優先順位を決定するトリアージが行われる可能については、44.0%が「知らなかった、考えたことがない」と回答。「知っていた」は20.6%、「なんとなく知っていた」は35.1%だった。


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