東京商工リサーチが15日に公表した新たなレポートで、訪問介護の事業者の倒産が急増していることが分かった。
今年1月から8月の倒産は44件。前年同期(30件)のおよそ1.5倍に増えた。この時期としては介護保険制度のスタート以降で最も多くなっている。
深刻なホームヘルパーの不足が背景にあるとみられる。厚生労働省のデータによると、昨年度の有効求人倍率は15.53倍。賃上げが進む他産業との競争も激化する中で、人材確保が極めて難しい状況になっている。
このほか、光熱費やガソリン代など物価の高騰も影響している可能性がある。
これまで1月から8月の倒産件数が最も多かったのは、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年。その後は小康状態にあったことから、東京商工リサーチはコロナ関連の支援策の効果が薄れたことも要因の1つにあげている。
在宅の介護ニーズはこれから更に拡大していく見通しで、それをカバーする体制を作ることが大きな課題となる。全国の訪問介護の事業所数はなお微増傾向にあるが、今のペースでは追いつかない懸念が強い。
ヘルパーは概ね4人に1人が65歳以上と高齢化も進んでいる。これまでサービスを支えてきたベテランの引退が加速する今後、状況は更に悪化するとみる関係者は少なくない。
光明となり得るのが来年度の介護報酬改定だ。厚労省の審議会では、基本報酬の引き上げや賃上げ、労働環境の改善などを訴える声が多くあがっている。東京商工リサーチは、「採算性向上への効率化支援なども求められる。業界への参入に与える影響も大きいだけに、改定内容が注目される」としている。