介護ベッドの手すりに首などを挟まれて利用者が亡くなった事故が、2007年度から今年度までの12年間に全国で少なくとも43件発生していることが、消費者庁の最新のまとめで明らかになった。利用者が大怪我をした事故は36件で、重大事故は計79件にのぼっている。
消費者庁はこうした実態を踏まえ、現場を支える介護従事者に改めて注意を喚起。安全性を高めた新たなJIS規格に適合した製品が使われているかチェックし、そうでなければ速やかに取り替えるよう促した。事情があって取り替えが難しい場合は、隙間をあらかじめ塞いでおく対策を講じて欲しいと要請。専用のスペーサーやカバーを用いたり、クッションやタオルを使ったりすることを勧めている。
「無理な体制でベッドの近くにある物を取ろうとした時に、ベッドボードとサイドレールの隙間に首が挟まってしまった」「ベッドから起き上がる際にバランスを崩し、手すり自体の隙間に首が入り込んでしまった」
そうしたケースが報告されているという。自分の体を支えられず倒れ込む恐れのある人や、危険な状態から自力で抜け出せないと思われる人、認知症で予測できない行動をとる人などは特に注意が必要となる。
JIS規格が改正されたのは2009年3月。手すりの隙間を小さくするなど基準が厳格化されており、以前の製品より安全な作りに改善されている。新しいJIS規格に適合した製品かどうかは、レンタル契約先や販売元に問い合わせれば把握できる。
古い製品を使わざるを得ない場合は、スペーサーや補助具、クッション、タオル、カバー、ブランケットなどによる対応が欠かせない。ベッドの周囲を整理・整頓し、利用者が身を乗り出さなくてすむ環境にしておくことも有効だ。
スタッフ間でリスクを共有しておき、事故につながる要因が生じていないか日頃から確認していく作業も肝要。厚労省はすでに「ベッド安全点検チェック表」を作成・配布しており、日々の業務で活用するよう広く呼びかけている。