厚生労働省は16日、2015年度に全国の自治体などへ寄せられた相談や通報のうち、実際に虐待にあたると判断されたケースは2479件だったと発表した。被害を受けた障害者は3154人。このうち3人は、無理心中や家族らによる暴行などで死亡している。人数は前年度からは451人増え、2012年の調査開始以来で過去最多となった。
調査によると、被害で最も多かったのは、家族などの「養護者」によるケース。確定事例は1593件、被害者は1615人で、前年度からはそれぞれ73件、80人の減少となっている。虐待の内容を複数回答でみると、最も多かったのは暴力などをふるう「身体的虐待」で62%。さらに、暴言を浴びせたりする「心理的虐待」が31.7%、賃金・年金などを搾取したりする「経済的虐待」が25.7%、世話をしなくなる「放棄、放置」が16.1%、「性的虐待」が4.1%となっていた。虐待が起きた原因(複数回答)については、「被害者と加害者の家庭内での人間関係」が47.9%と最多。次いで、「加害者の性格や言動」の42.2%が多く、「加害者が虐待だと認識していないケース」も38.5%に上っている。
一方、福祉施設の職員らによるケースは339件(前年度比28件増)。被害者は569人(同44人増)に上った。内容は、こちらも「身体的虐待」が58.1と最も多く、そのほか「心理的虐待」の41.0%、「性的虐待」の14.2%、「経済的虐待」の7.7%、「放棄、放置」の5.3%となった。原因は、「教育や知識、介護技術等に関する問題」が56.1%と最多。次いで、「加害者の性格や資質の問題」が51.2%と続き、「倫理観や理念の欠如」が43.9%、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が42.0%などの順番になっている。被害が起こった場所で最も多かったのは、「障害者支援施設」の88件。割合は、全体の約4分の1にあたる26.0%を占めている。
被害者をみると、「養護者」からのケースでは、男性が36.5%、女性が63.5%と女性の方が多い一方、福祉施設等の職員らによるケースでは、男性が66.4%、女性が33.6%と割合のバランスが逆転している。被害者の障害の種類は知的障害者が多く、福祉施設等ではその割合が83.3%と多いのが特徴的だ。
■「研修などを通じ、啓発を」
厚労省の担当者は、件数増加の背景について、「障害者虐待防止法の浸透で、潜在的なケースも含めて、疑いの報告などが増えてきている」と説明。そのうえで、「全国で実施する研修などを通じて啓発を続けていきたい」としている。