農研機構を中心とする研究グループは、薬剤に抵抗性を持つ害虫を遺伝子診断で早期に検出する技術を開発した。この技術は、コナガやワタアブラムシなど6種の重要害虫に適用することができる。また、害虫別にサンプリング手法や診断方法、代替防除法の提案などをまとめたガイドライン案も作成されており、農研機構ウェブページで公開されている。
PCR法を活用した新技術を開発 従来の方法と比べ特定が迅速に
害虫を防除するために同じ薬剤を続けて使用すると、その薬剤が効かない「抵抗性害虫」が出現し、やがて大勢を占めるようになる。抵抗性害虫の対策には、抵抗性個体群の早期発見と適正な薬剤使用が特に重要となる。
そこで研究グループは、国内で発生している代表的な薬剤抵抗性害虫の抵抗性獲得原因となる遺伝子変異を同定し、その変異をPCR法で検出する技術を開発した。
これまで害虫が持つ薬剤抵抗性の強弱は濃度を変えた薬剤を処理したあとの死虫率を調べることによって判定されており、結果を得るまでには数週間から数ヵ月を要していた。今回開発された技術では、特定の遺伝子を2時間程度で検出できるPCR法を用いることで、約半日で被験虫が薬剤抵抗性遺伝子を持っているか確認することができる。
また、この検出技術は感度が高く、地域内の個体群を適切にサンプリングすれば、被害が発生する前に薬剤抵抗性遺伝子を持つ害虫の地域内での侵入や定着状況(リスクレベル)を判断することもできる。
害虫防除指導者向けにまとめたガイドライン案をウェブで公開
今回、害虫防除指導者向けに、薬剤抵抗性遺伝子診断法、サンプリング手法、簡易生物検定法、抵抗性発達リスク判定の基準、代替防除法の提案をまとめたガイドライン案が作成されており、農研機構ウェブページで公開されている。
このガイドライン案は、①薬剤抵抗性の概説、②害虫種別のガイドライン案、③害虫種別検定法技術マニュアル、④殺虫剤の作用機構分類表、⑤IRACコードの説明、⑥農薬名50音順IRACコード対応表等で構成されている。
①では、抵抗性発達の経緯と現状、薬剤抵抗性管理の考え方、サンプリングとリスクレベル、抵抗性遺伝子検出の概要、生物検定法の計算手法、農薬散布時の留意点などがとりまとめられている。
②では、コナガ、チャノコカクモンハマキ、ワタアブラムシ、ネギアザミウマ、ナミハダニ、ウンカといった害虫種ごとにガイドライン案が整理されている。
③では、▽コナガ‐ジアミド剤 ▽チャノコカクモンハマキ‐DAH系IGR剤 ▽ワタアブラムシ‐ネオニコチノイド剤 ▽ネギアザミウマ‐ピレスロイド剤 ▽ナミハダニ‐キチン生合成阻害剤 ▽トビイロウンカ‐ネオニコチノイド剤 ― に関する生物検定法‐遺伝子診断法が紹介されている。