政府は16日、2018年度の「自殺対策白書」を閣議決定した。厚生労働省がまとめた最新の調査結果によると、2018年の1年間の自殺者数は前年より481人少ない2万840人。減少は9年連続で、1981年以来37年ぶりに2万1000人を下回った。ただし、他の先進国と比べると依然として厳しい状況にある。
人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は、直近データの2017年で16.4。フランス(2014年:13.8)や米国(2015年:13.8)、ドイツ(2015年:12.3)より高い水準となっている。
2018年の自殺者の男女比は概ね7対3。男性が1万4290人、女性が6550人だった。年齢別でみると多い順に、50代、40代、60代、70代となっている。
原因・動機は複合的に連鎖するケースが多いとみられるが、とりわけ「健康問題」が目立つ。遺書などで明らかになった原因・動機を1人3つまで計上した結果によると、「健康問題」が1万423件、「経済・生活問題」が3432件、「家庭問題」が3147件、「勤務問題」が2018件などとなっている。
■ 深刻な若年世代
若い世代の自殺も依然として深刻だ。2018年は10代で599人が、20代で2152人が、30代で2597人が自殺した。10歳から39歳の死因のトップは自殺。先進国の中でこうした状況にあるのは日本だけだと記載されている。
自殺対策白書は、2006年に施行された「自殺対策基本法」にもとづく法定白書。政府が毎年、国会へ提出する決まりとなっている。
■ SNSには相談2.2万件
厚労省が若年層の自殺防止に向けた取り組みとして進めているインターネット交流サイト(SNS)での相談事業では、2018年に2万2725件の相談があった。内訳はLINEが1万9412件(友達登録数は5万7978人)と最も多く、チャットが3108件、Twitterなどのその他が205件だった。年齢階級別では、最も多い未成年が9112件で全体の43.9%を占めたほか、20代(8570件:41.3%)、30代(1798件:8.7%)、40代(1017件:4.9%)、50歳以上(257件:1.2%)の順となっている。男女別では、女性が全体の92.1%と大半を占めた。寄せられた相談の内容では、「メンタル不調」(8282件)が最多で、「家族」(3879件)、「学校」(2993件)と続いていた。
今後に向けては、実施する民間団体によって得意とする分野が違うため事業者間の連携を進めていく必要があると指摘。また、SNSの性格上、これまで支援につながらなかった人にアプローチがしやすい反面、多数の相談が寄せられるため、どれが優先的に対応すべきかを意識して効率性を念頭に実施していく必要があるとした。さらに、女性の相談が多数を占めていることから、比率的に多い男性が相談しやすい仕組みを構築することも課題としえいる。