国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「戦略的イノベーション創造プログラム自動走行システム/大規模実証実験」の管理法人として、自動走行に必要な高精度な3次元デジタル地図(ダイナミックマップ)やヒューマンマシンインターフェイス、情報セキュリティ、歩行者事故低減、次世代都市交通、社会受容性醸成の6つの研究開発テーマの委託先を決定し、自動走行システムの大規模実証実験を開始した。今後、東名高速や首都高などの高速道路や一般道路などで実証実験に取り組み、技術開発や社会受容性の醸成を進めることで、高度なで自動走行システムの実用化をより一層加速していく。
実証実験の実施を予定しているのは東名高速・東京JCT~清水JCT、新東名・御殿場JCT~清水JCT、常磐道・三郷JCT~谷田部IC。さらに、首都高速・三郷線(小菅JCT~三郷JCT)、中央環状線(葛西JCT~大井JCT)、都心環状線(谷町JCT~浜崎橋JCT)、湾岸線(大井JCT~葛西JCT)、羽田線(浜崎橋JCT~芝浦JCT)、台場線(芝浦JCT~有明JCT)、渋谷線(東京IC~谷町JCT)、深川線(箱崎JCT~辰巳JCT)、向島線(箱崎JCT~駒形IC)の計約300キロ。
このほか、一般道路として、昭和通り(新橋駅前交差点付近~三原橋交差点)、晴海通り(三原橋交差点~晴海大橋南詰交差点)、環状2号線(晴海大橋南詰交差点~有明二丁目)、お台場周辺地域、茨城県道19号・つくば市道・県道123号(常磐道谷田部ICから日本自動車研究所(JARI)正門)で実証に取り組む。JARI正門からJARI市街地模擬テストコース間及び市街地模擬テストコース内でも実験を行う。
「ダイナミックマップ」
三菱電機を中心に最終仕様の確認・合意、国際標準化、デファクト化の推進などのため、今年度はマップの試作・整備及びセンター機能や更新手法を確立し、静的な3D地図データを検証する。来年度は、通信を使用した地図の更新や動的な情報を配信する実証実験を行う。
「ヒューマンマシンインターフェイス」(HMI)
産総研やデンソーなどにより、今年度から来年度にかけて、自動走行システムの機能・状態・動作についてのドライバーの理解について検討し、事前知識のあり方やシステム状態をドライバーに伝えるためのHMIの基本要件を策定する。車載可能なドライバーモニタリングシステムの開発にも取り組む。また、歩行者・自動走行車以外の車とのコミュニケーションのための外向けHMIを試作・検証し要件を策定する。
「情報セキュリティ」
今年度は自動走行における車両のセキュリティ脅威の調査および分析を行い、国際標準化も見据えて車両の対ハッキング性能を検証するセキュリティ評価手法を策定する。2018年度に策定した評価手法を用いて実証実験を行う。
「歩行者事故低減」
歩車間通信技術と歩行者高精度測位・行動予測技術による相互注意喚起機能の有効性評価を行い、実交通環境下での織り込み技術の歩行者事故低減の有効性を実証する。
今年度は、様々なシーンを想定した機能検証による改良点の抽出を行う。来年度は東京・お台場エリア、有明エリアで一般参加者を対象とした実証実験を行い、実交通環境下での歩行者事故低減効果を評価し、実用化に向けた課題整理を行う。
「次世代都市交通」
日立製作所などに委託し、高齢者、障害者を含む幅広い利用者にとって便利で使いやすい公共交通機関の実現へ向けた利便性やアクセス性の向上およびこれらによる利用転換を促進し、ART(次世代都市交通システム)技術の社会実装に向けた社会受容性醸成を目的として、今年度から来年度にかけて、ARTの速達性を向上させる高度化PTPS(公共交通優先信号システム)や歩行者移動支援システムの実証実験を行う。
「社会受容性醸成」
委託先は豊田通商、名古屋大など。今後の自動走行車両の普及に向け、官民の自動走行に対する受容性の醸成が課題となる中、国内外の先行事例について調査するとともに、広報・イベントを通じた社会受容性向上策の有効性を調査することにより、大規模実証実験を用いた社会受容性醸成に寄与する方法を明らかにする。