健康な社会の実現のためには、一人ひとりが日々の自分の健康状態を把握し、病気を未然に防ぐことが重要。中でも、高血圧は身体活動、食事、睡眠といった生活習慣が大きな要因となって引き起される明らかになっている。
こうした生活習慣と高血圧の関係は多くの調査が行われてきたが、自己申告型のアンケート調査が多く、実態を正しく反映しているか、客観性に課題があった。
昨年度までに15万人以上参加
東北大学東北メディカル・メガバンク機構とオムロンヘルスケア(株)は、日常生活のモニタリングで得られた検査値と高血圧などの疾病の関連を明らかにするための共同研究を実施する契約を締結し、共同研究を開始した。
東北メディカル・メガバンク機構が実施する東北メディカル・メガバンク計画の一環として、特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡するコホート調査の参加者5千人に尿中のナトリウムとカリウムのバランス(塩分と野菜や果物の摂取バランス)・身体活動量・睡眠状態を10日間にわたって自ら測定。
データと家庭血圧などの測定値との関連を検討し、さらに遺伝情報や生活習慣情報など種々の要因を考慮に入れた総合的な解析を行うことで、「自分で測り自分で創る健康社会」の基盤構築を目指す。
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災の被災地などで健康調査を行い、被災地の健康状態の改善と遺伝要因・環境要因を考慮した次世代型医療・予防の確立を目指したもので、平成27年度から日本医療研究開発機構(AMED)が研究支援担当機関の役割を果たしている。これまでの研究では、東北大と岩手医科大が協力して宮城県と岩手県で15万人規模のコホート調査を実施し、平成23年度から平成28年度までの第1段階において目標としていた15万人以上の参加を実現している。
今年度からは、コホート調査の参加者のその後の健康状態を調査するために、6月1日から詳細二次調査が行われる。
調査に合わせて共同研究に協力を求める方針。同意したモニターには、オムロンヘルスケア社の尿ナトカリ計、活動量計、睡眠計を配布し、生活習慣情報を測定してもらう。
尿ナカトリ計については、オムロンヘルスケア社も参画している東北大を中心としたセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラム東北拠点において、一般住民を対象とした実行可能性を検証するフィージビリティ 研究がすでに行われ、有用性が確認されている。
適切な予防・治療開発に貢献
今回の共同研究を通じて、より精度の高い生活習慣情報を得ることで、個人の体質に合わせた適切な予防法・治療法の開発に貢献できる。
またこれらのデータは、東北メディカル・メガバンク機構のバイオバンクに格納され、データの整理が完了すれば全国の研究者に分譲され、個別化予防・治療の研究に活用してもらう。共同研究の期間は契約締結から平成30年3月31日までを予定している。