2016年9月28日 緊急対応研究課題の第2回公募 小麦、リンゴの病害に対する研究を実施

農林水産省では、現在、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の「緊急対応研究課題」として、▽北海道におけるコムギなまぐさ黒穂病のまん延防止対策技術の開発 ▽リンゴ黒星病の発生被害軽減をめざした多発要因の解明と発生予察システムの開発 ― を実施する研究機関の公募を行っている。期間は9月30日までで、採択課題の決定・公表は10月上旬を予定している。

農林水産省は、年度途中に不測の事態が発生し、緊急に対応を要する研究課題が生じた場合、「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」のうち「緊急対応研究課題」として、研究対象を設定し対応することとしている。現在は、「北海道におけるコムギなまぐさ黒穂病のまん延防止対策技術の開発」、「リンゴ黒星病の発生被害軽減をめざした多発要因の解明と発生予察システムの開発」といった研究対象について、研究実施機関(研究グループ)を公募している。

 

北海道におけるコムギなまぐさ 黒穂病のまん延防止対策技術の開発

コムギなまぐさ黒穂病は、感染すると小麦の子実内に異臭のする病原菌の胞子が充満する病気。この病気の発生園地では、収穫時に感染子実が砕け正常な子実になまぐさい異臭が付着し、小麦の商品価値が大きく損なわれるため、収穫を諦めて廃耕しなければならなくなる。

近年、小麦の主産地である北海道でこの病気の発生が増えてきている。一昨年と昨年の被害面積は約200ヘクタールだったが、今年は約1100ヘクタールで発生が確認されている。特に、石狩やオホーツク地域では非常に大きな被害が生じた。また、この病気は土壌からも感染するため、北海道の産地における輪作体系が維持できないのではないかとの懸念もある。

こうしたことから、次期作以降の発生被害を軽減し、小麦の安定生産を維持するため、有効なまん延防止技術を講じるとともに、土壌からの感染リスク軽減技術の開発を早急に進めることが必要となっている。

研究対象「北海道におけるコムギなまぐさ黒穂病のまん延防止対策技術の開発」については、①コムギなまぐさ黒穂病の発生要因の解明とまん延防止対策の普及 ②コムギなまぐさ黒穂病菌の菌類学的性状の解明と分類・同定、③諸外国におけるコムギなまぐさ黒穂病研究の進展状況と発生動向の調査 ― といった研究を実施することとしており、これらを併せて実施できる研究機関を募集している。採択は1件の予定。この研究については、今年度内に終了することが求められている。研究費の上限は900万円に設定されている。

 

リンゴ黒星病の発生被害軽減へ 多発要因解明と予察システム開発

リンゴ黒星病は、病原菌が葉に感染し激しく発病すると落葉し、幼果に感染すると奇形果となるなど、樹勢の低下や果実の商品価値を大きく損なう病害である。植物防疫法では、指定有害動植物に指定されており、病害虫発生予察事業の対象としてその発生動向を調査し、被害軽減を図る必要がある病害の一つとなっている。

青森県では、昨年からこの病気が多発傾向で、昨年・今年の発生園地率はそれぞれ35.1%、21.6%と、平年(11.9%)の倍以上となっている。特に、発生は津軽地方に集中しており、一部園地では激しい果実被害も生じている。

このため、近年におけるこの病気の多発生要因を早急に解明し、来年度以降の果実被害軽減に向けた対策を講じることが必要となっている。また、この病気の防除対策として、春先の一次感染を防ぐことが最も効果的であることから、ほ場での見取り調査や飛散胞子の調査等による既存の発生予察調査を補完する新たな発生予察システムの開発や、秋季防除による越冬伝染源の減少等のまん延防止のための技術開発が必要となっている。

この研究課題「リンゴ黒星病の発生被害軽減をめざした多発要因の解明と発生予察システムの開発」については、①リンゴ黒星病の近年の多発生要因の解明 ②秋季防除による次年度の発生軽減技術の検討 ③病原菌の薬剤感受性検定による有効薬剤の検討 ④気象情報等を活用したリンゴ黒星病の発生予察システムの開発 ― を行うとしている。現在、これらを併せて実施できる研究機関を募集しており、1件の採択が予定されている。この研究については、今年度内に終了することが求められており、研究費については、400万円の上限が設定されている。


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