2021年8月24日 結城康博氏、「通所介護の入浴介助加算 自立支援を給付費抑制の理由に使うな」

今回は通所介護の入浴介助加算の話。今年度から創設された新たな区分「加算2」についてです。

自宅でお風呂に入れる人はできるだけ自宅で、という自立支援のインセンティブを設けたのは非常に良いことでしょう。私が問題だと思うのは、既存の「加算1」の単価を引き下げたことです。

※ 新たな「加算2」は55単位/日。利用者が自分自身の力で、あるいは家族やヘルパーなどのサポートを受けながら、それぞれの住まいで入浴できるようにすることが目的だ。この導入に伴い、従来区分の「加算1」は10単位減とされた。

当たり前のことですが、お風呂に入るためにはタオルや石鹸の用意、お湯はりなど事前の準備が欠かせません。浴槽や排水溝などの掃除も不可欠で、日常的に相応の手間がかかるんですよね。通所介護のサービスにはこの部分も当然含まれます。

今回の見直しを考えた方々は、こうした生活感覚、現場感覚をしっかりイメージできているのでしょうか?

1人暮らしや老老介護の高齢者の場合、自力で体を洗うこと、お湯に浸かることが難しいだけではなく、必要な準備や掃除などができないケースも非常に多いです。このため、「加算2」の自立支援の対象となる人はかなり限られるでしょう。きめ細かい生活援助を十分に使えたり、家族の介護者がいたりすることが前提となるわけですが、そういう高齢者ばかりではないのが実情です。

通所介護としては、何もせずに大幅な減収となることだけは避けたいところです。なんとか「加算2」を取得しようと考える()のですが、そこでケアマネジャーとの立場の違いが生じるのはやむを得ません。

※ 厚労省は4月末になって、自宅で入浴できない高齢者も加算の対象になり得るとする通知を出している。

「加算2」の算定に慎重なケアマネが一部にいると指摘されていますが、高齢者の状態や環境を踏まえて疑問を持っているのであれば、しっかりと耳を傾けなければいけません。取り組みの目的や効果がよく見えない場合、いったん”待った”をかけるのは当然のことでしょう。

そもそも国が不当な報酬差をつけたことが間違いです。いたずらに現場を混乱させないで頂きたい。

自立支援の重要性は良く分かりますが、その文脈とは異なるサービスの価値を軽視するのは大きな誤りです。なぜ「加算1」を減算するのか全く納得できません。通所介護の入浴コストは下がっていませんし、従来のサービスの重要性も大きく変わっていないでしょう。これでは基本報酬を上げた意味も失われ、介護職員の処遇改善も十分に進みません。

今回の見直しをみると、給付費の抑制が第一の狙いではないかと疑わざるを得ません。自立支援をその理由に使わないで頂きたい。加算をつけて評価していく手法は有効ですが、現段階で「そうでなければ減算」とするのはかなり乱暴ではないでしょうか。


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