2020年5月12日 結城康博氏 「介護現場に金を出せ」 声援だけはもうたくさん

まさかこのまま無視を決め込むつもりではないですよね?

新型コロナウイルスの感染拡大により、介護の現場が危機的な状況に追い込まれています。思い切った支援策が必要なのは火を見るより明らかではないでしょうか。

淑徳大学総合福祉学部教授 結城康博氏

私はシンプルに介護報酬の引き上げを提言します。全サービス共通で一律5%アップ。このうち3%~4%分は、介護職員に「特別手当」を支給する原資として使う決まりとするのがいいでしょう。残りは衛生用品の購入など、事業存続の足しにしてもらえればと考えています。

仕事に出られない職員もいて人手不足に拍車がかかるなか、綱渡りの状況が続いて疲弊が一段と顕在化してきている − 。これを読んでいる皆さんなら、現場の状況はよく分かっていることでしょう。サービスの「利用控え」や出費の増加も重なり、事業所の経営も極めて厳しくなっています。

最も分かりやすい支援策は介護報酬の引き上げでしょう。5%は過去の改定でも例のない大幅増です。地域区分の上乗せ割合を上げる形をとれば時間もかかりません。

財源は全額を公費で賄って頂きたい。介護の給付費は現在11兆円強ですから、必要なのは年間およそ6000億円。真水で何十兆円、というスケールの経済対策が公然と議論されているわけですから、介護現場にこのお金を投じるか否かはもう完全に政治の意思次第でしょう。

もちろんこれだけでは足りない面があることは承知していますが、まずはスピードも重視しなければいけません。地域区分の見直しなら迅速に実行できます。国が本気さえ出せば7月スタートも可能でしょう。濃淡はあれどどの現場も苦境にあるのですから、支援策の柱としてはやはり一律5%アップが最良だと思います。

厚生労働省はこの間、事業所の運営基準などの柔軟な運用を認める事務連絡を多く出してきました。それも大事なことですが、はっきり言って通知はもううんざりなんです。現場に声援を送るだけ、というのももうたくさんなんです。

もし本当に支える気持ちがあるのなら、首相官邸はすぐに、6000億円の介護向けの予算を確保して頂きたい。話はそれからです。

医療現場が非常に大変な状況に置かれていますので、基本的にそちらが優先されることは十分に理解できます。でもそろそろ、介護現場にも光を当てるべき時期が来ているのではないでしょうか。

見て見ぬふりをするのはもういい加減やめて頂きたい。介護現場の皆で声を上げていきましょう。


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